第29話

 戦線を押し戻すどころか、逆に押し返すようになった人類側。


「ふぅー。なんとか上手く行ったな」

 

 急ごしらえで作られた前線基地の一つで、鎧を抜いた中央騎士団長が息を深く吐く。


「本当に上手く行って良かった……これで、希望がみえてきた」

 

「そうね」

 

 中央騎士団長の言葉にマキナが頷く。

 今、ここには人類側の、前線に立っているトップ達全員が集まっている。


「……このまま行けば、魔族を我らが大陸から追い出される……!」


「えぇ!いけますよ!今の所我が軍は乗りに乗っています!兵士たちの士気も高く、屍を乗り越えてきた彼らは既に一つの戦力です!」


「私のところも同様ですね。……今のところ何も問題もありません」

 

「兵站もしっかりとしますしね」

 

 増援、食料、武器……何もかもがしっかりと揃っている。


「素晴らしい……ッ!」

 

 指揮官たちの言葉を聞いて、中央騎士団長は頷く。


「あ、でも」

 

 それにマキナが口を挟む。


「魔王が動き出したから、このまま上手くはいけないと思うよ」

 

「「「……え?」」」

 

 マキナの一言を聞いて、この場にいる僕とマキナ以外の人が硬直する。


「ま、お、う……?」

 

 ずっと沈黙していた魔王が動いたという話を聞いて、ものすごい表情を浮かべる面々。


「そ、それは……本当なのか……?」

 

 中央騎士団長が動揺しながらマキナに尋ねる。


「うん。そうだよね。……え?あっているよね?」

 

 マキナが僕の方に尋ねてくる。


「うん。そうだね。ちゃんと魔王が動いているのを確認したしね」

 

 魔王の気配ならすぐにわかる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?嘘だろッ!?なんで……ッ!後少しだと言うのに……ッ!」


「後少しだからじゃないかな?」

 

 中央騎士団長の絶叫に、マキナは平然と返す。


「そうだけども!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」

 

 中央騎士団長は発狂し、頭を掻きむしり始める。


「クソッ……なんで……」

 

「大変だね……」

 

 発狂している中央騎士団長を見て、マキナはまるで他人事のように呟いた。

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