第23話

「んしょ」

 

 僕はちょっとだけ力を込めて強引に二人を引き剥がす。

 ……まったく。僕を掴むその手に力を込めすぎたよ。ふたりとも。


「さて……と」

 

 僕はその視線をレイオフへと向ける。


「ふーふーふー」

 

 これ以上ないまでの殺意を僕へと向けてくるレイオフへと。


「シネェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」

 

 レイオフは絶叫しながら僕の方へと突撃してくる。


「どうやってその術を知ったのか……非常に興味深いところではあるね」

 

 僕はそんなレイオフを眺めながら、跳躍。

 レイオフの振るうなんかもうよくわからない真っ赤なべちゃべちゃを回避していく。


「ふぅむ……やっていることは間違いない。僕のよく知っているあれだ」


「クソッ!クソッ!クソォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


「何かの文献が残っていたのかな?」

 

 僕はそんなことを考え……レイオフの心臓部を右手で貫く。


「ぐふっ……」

 

「よいしょ」


 そして僕は心臓の代わりに存在していた一つの結晶を取り出す。


「……ァ」


「小さいけど間違いない……これはありがたく使わせてもらうよ」

 

 僕は取り出した決勝を見て頷き、それをポケットへと仕舞う。


「アァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 心臓の代わりを果たしていた結晶を抜き取られたレイオフは体をぐちょぐちょに溶かして消えていく……。

 残ったのはなんかものすごい悪臭を放っているはた迷惑な謎の液体だ。

 

「よいしょ」

 

 僕は残った液体を魔法で完全に消滅させてしまう。

 これで良し。


「帝国の臣民を使ったのかな?どこでこれの作りかたを学んだのか結構気になるけど……まあ、いいか」


 結晶。

 冥魂晶宝。

 それを持つものに対して絶大な力を齎す神アイテムであるが、作るための条件が最低でも人間の魂が10万ほど必要になってくる。


 捧げられた人の魂が多ければ多いほど強くなっていくこの冥魂晶宝、これに捧げられている魂の数はちょうど殺されたアレイスター帝国の臣民と同じくらいであった。

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