第24話

 人類と魔族の戦い。

 それは人類の敗北で終わったと言えるだろう。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 この場で立っている人類は勇者だけ。

 生きているのは勇者を除いて僕に助けられているレインとレルだけ。


「クソ……」

 

 勇者は一人、魔族たちに囲まれている中ボロボロになっても悠然と剣を構えて立っていた。

 ……なんか頬が赤いような気がするのはきっと気のせいだろう。


「終わりだね」

 

 僕は勇者の側に立ち、彼女に向かってそう告げる。


「既にここだけじゃなく、全ての戦線が破られている。もうどうしようもない。ここからはゲリラ戦だよ」


「……」

 

 僕の言葉に対して勇者は沈黙する。


「さて、と。さっさと撤退しようか」


「……こんな状況じゃ撤退もクソも……」


「そうだッ!ゆうs」


「えいや」

 

 僕は魔力を開放し……爆発させる。

 爆発した魔力の奔流が魔族を飲み込み、存在そのものを洗い流していく。


「はい。これで終わり。撤退可能だね」


「さ、最初から……」

 

 圧倒的な僕の力を見て、勇者は思わず言葉を漏らす。


「別に僕は人類の味方ってわけでもないからね」


「……んぅ!なのに、私は助けてくれるんだ」


「まぁね」

 

 多大な犠牲を払うも、最終的には勇者が魔王を倒してハッピーエンドを迎える。

 

「さて、と。早く撤退してしまおうか。レインとレルも安全な場所に運んでおきたいしね」

 

 自分の手で抱えているレインとレルに視線を送り、僕は告げる。


「えぇ……ねぇ、ゲリラ戦しかないのよね?」

 

 勇者はさっき僕の告げた言葉を繰り返す。

 

「ん?そうだね」


「ふふふ……じゃあちょっとついてきてくれないかしら?勇者パーティー、精鋭として魔族の重要人物を殺す……。どうかしら?」


「補助程度ならしてあげるよ。それにちゃんと命も守ってあげるから安心してね」


「良し!決まりね……!」

 

 僕の言葉に対して勇者は嬉しそうに頷き、ガッツポーズをして喜びを顕にする。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……二人旅……んん!」


 勇者の頬は赤く染まり、息は荒い。

 ……やっぱりこいつ勇者失格では?

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