第20話

「た、大変じゃない!?」

 

 勇者がその言葉を聞いて驚愕する。


「はいッ!!!大変ですッ!現状……最も大変な自体ですッ!最悪……このまま人類軍が壊滅する可能性もッ!!!」


「今すぐに向かうわッ!間に合うか……わからないけど……少しでも……ッ!!!」

 

 慌てた様子で馬の方へと向かい、乗り込む。

 完全に戦闘態勢ではなく、移動態勢。

 聖剣も腰につけられ……抜くまでにほんの数瞬遅れが生じるだろう。

 それを……それだけを待っていた存在が今。この場に存在していた。



「マダダァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 その瞬間。

 かすれた、大きな声が響き渡る。


「なっ!?」


 完全に殺し……地面を転がっていたはずのレイオの生首の瞳がいつの間にか開いていて、勇者のことを睨みつけていた。

 今、レイオには考えられないくらい強大な魔力が渦巻いていた。

 レイオの狙い……目的は勇者の足止め。

 

 狙うは馬。勇者の足。 

 勇者ならば走ることも可能だけど……それだと無駄に体力を消耗し、戦闘前から疲れてしまう。

 勇者にとっても走るというのはあまりしたくない選択肢なのだ。

 

 自爆。

 最初からレイオは自分が勝てるとは思っていない。最大限戦って足止めし、最後は自爆で時間を稼ごうとしているのである。

 凄まじい覚悟であろう。


「油断し過ぎだよ」

 

 そんなレイオの前に僕は勇者よりも早く移動して、その魔力が暴走しないように操作しながら完全にレイオの命を奪う。


「あなたッ!!!」


 勇者は僕のことを見て叫んだ。


「やっほー。久しぶり。僕のことを覚えている?」

 

 勇者に対して僕は笑顔で話しかけた。

 ちなみにちゃんと仮面は装備している。ついさっきまではつけていなかったけど……貴族である勇者の前ならつけていたほうが良いだろう。

 会いに行ったときも仮面をつけていたし。


「覚えているわッ!というか、あなたも来て頂戴!」

 

 僕のもとまで馬で着た勇者は何も返答してない僕のことをつかんで……走り出した。

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