既にBADEND済みで国外追放されているゲームの悪役貴族に転生した僕はどうやら最強で、他国の王女を始めとするヤンデレ美少女たちに囲まれているようです

第9話

　大地が爆ぜ、土煙が上がる。

「シッ！！！」

「ヤァ！！！」

　勇者と呼ばれる少女の持っている聖剣と、魔族の男が持っている槍が激しくぶつかり合う。

　火花が散り、その衝撃が空気を震わせる。

「グゥ……フンッ！！！」

「遅いわ」

　戦いの趨勢は少女の圧倒的優勢。

　魔法と剣術を巧みに扱い、槍を操る魔族を果敢に攻め立てていた。

「聖剣……」

　勇者と呼ばれる少女は聖剣に膨大な魔力を流し込み、その聖剣を振るう。

　聖剣の光は大地を削り、空気を震わせて魔族をに対して衝撃を叩き込む。

「ヌゥ……ッ！！！」

　魔族はそれをなんとか受け止めるも……それを受け止めた槍は真っ二つに折れ、使い物にならなくなってしまう。

「これで終わりね」

　己の武器を失った魔族に対して勇者と呼ばれる少女は聖剣を振るう。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」

　魔族の男は自らの獲物を失ったと言うのにそれでも諦めようとはせず、拳を握って己を振るい立たせる。

　しかし、そんなことは無駄だ。

　必死にもがき、あがいたところで無駄である。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ」

　勇者と呼ばれる少女の振るう聖剣が、魔族の体を斬り裂くッ斬り裂くッ斬り裂くッ！！！

　魔族の腕が吹き飛び、足が吹き飛び、下半身が吹き飛び、魔族の体が地面へと落ちる。

「中々に強かったわよ。あなた。褒めてあげるわ」

　そして、最後に魔族の首を斬り落とした。

「ふー」

　勇者と呼ばれる少女は亡骸となった魔族から視線を外して、周りへと視線を向ける。

　激しい戦いを繰り広げている両者。

　そんな遠くから、精鋭で構成されている魔族の部隊が近づいてきているのを確認する。

　対勇者特殊部隊だろう。

　彼らが到達すれば、戦いは更に激化し、ほとんどの人が倒されてしまうだろう。

　それを容認することは出来ない。

　勇者と呼ばれる少女はすぐさま決断を下した。

「撤退ッ！」

　人類の精鋭騎士団は勇者と呼ばれる少女の号令を聞き、撤退を開始した。