第7話

 分厚い雲が天空を支配し、真っ赤な血が大地を染め上げる。

 魔法が飛び交い、煙が上がる中……雄叫び、悲鳴、慟哭、怨嗟、勇気、絆、愛、殺意、恐怖、憎悪、驕り、復讐、劣情。

 様々な感情が渦巻いていた。


 魔法。

 地面を割り、天候を変え、多くの血を流す大魔法。

 簡単に人の命を奪うことの出来る魔法。

 空を支配し、大地を襲う魔法。

 

 それらは現代兵器、銃や大砲、戦闘機と同じようなものだ。

 魔法を自由自在に操る異世界人と魔族。

 

 彼らの戦いは第一次世界大戦や第2次世界大戦を彷彿とさせる。

 

 人魔大戦。

 

 100年に一度くらいの頻度で行われている激しい大戦。

 そんな大戦の戦端が今、切られたのだ。

 魔王に率いられた魔王軍が人間界へと攻めてきたのだ。

 それに対抗するように、人間側もイルミ王国を中心に人類結成軍を組織し、圧倒的な強さを持っている魔族に対して人類は圧倒的な数で対抗していた。


「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええ!」


「「「『ファイヤーボールッ!!!』」」」

 

 指揮官の号令とともに魔法が一斉に発射され、煙を上げる。

 

 大戦。

 その様子。

 それは第一次世界大戦のような塹壕を掘っての泥沼の戦いである。

 魔族と人間がともに魔法を打ち合い、激しい戦いを繰り広げる。

 基本的には魔法での応戦であり、接近戦が行われる時は少ない。

 接近戦が繰り広げられるのは魔法に一切怯まない魔族の強者が人類の塹壕を襲いかかってきた時。


 もしくは、人類の希望である勇者が魔族の塹壕を襲ったときである。

 

 ■■■■■


「行くわよ」

 

 美しい白馬にまたがる腰にまで伸びる美しいプラチナの髪をなびかせ、人々を畏怖させ、魅了させる美しい金眼を持った少女。

 その身は黄金に輝く神々しい鎧に守られ、その手には膨大な魔力を放ち、万物を浄化する聖なる光を放っている聖剣が握られている。 

 

 勇者。

 

 そんな二つ名を持った少女が自らの後ろにいる鎧を纏った選りすぐりの精鋭騎士団に向けて一言告げた。

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