第5話

「……」

 

 レインたちは梨々花の言葉に対して沈黙する。


「私はお兄と十数年生きていて、お兄について色々と知っている……その情報をあなたたちにも共有してあげようと思うの」

 

「……それはありがたいですね。ですが、疑問なのは私たちに共有する理由です……なぜ自分のアドバンテージを壊すようなことをするのですか?」

 

 梨々花の提案。

 それは、レインたちにとってとても都合の良いものだ。

 だからこその疑いが拭いきれなかった。


「簡単よ……私が話したい内容と被るんだけどね。お兄は恋愛感情を知らないの」

 

「「「ッ!?」」」

 

 サラッと告げられた梨々花の言葉に


「お兄の評価基準は守るべき人、凡人、不快な人。この三つだけ。不快な人は殺す。凡人は親しく接する。守るべき人は大切にする。それだけ。これ以上は存在しない。守るべき人が結構簡単になれちゃうし……お兄にとって特別な人ってほとんど存在しないんだよ……」

 

 梨々花は嫌そうに……忌々しそうに話す。

 恋愛感情を知らない。人間の評価基準が他者とは圧倒的に違う。


「……何、それ?」

 

 ニーナが苛立ちとともに声を発する。


「ふふふ。えぇ……あなたのその気持ちはわかるわ。でも、事実なの。お兄はモテるの。色々な女の子に対して告白されて、好きって返して、彼女を何人も作って、修羅場になって……僕はみんな好きだよ?って言ってしまうような男の子なの。それでなんだかんだ許されるしね……お兄」


「「「……」」」

 

 梨々花の言葉に対して三人が絶句する。


「私もなんとかしようとしたんだけど……モテ度が異常で……どんなに愛を囁いても無駄で……」

 

 ものすごく……ものすごく疲れたような言葉を梨々花は漏らす。

 実際にものすごく疲れているのだろう。


「……私だけのものにするつもりだった……でも、それは出来そうにない。だから、仲間を作ることにしたの。一緒にお兄を自分の物にしない?……三人くらい許容するわ……60人くらい彼女いた時もあったし、それと比べたら全然よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る