第2話

「よく我についてたどり着いたな。褒めてやろう」

 

 僕の前にいる僕は誰よりも寛大に告げる。


「ありがと……でも、あれだけのヒントがあってたどり着けなかったそいつはとんでもない馬鹿だよね」

 

 少しだけ自嘲気味に僕は告げる。

 ……ここまでにたどり着くのに結構な時間がかかってしまった。だから、僕もあまり強く言葉を告げる事ができない。


「うむ……まぁ、そうであるな。それでは答え合わせと行こうではないか」

 

「そうしようか」

 

 僕は


「君さ……体を魂で作っているでしょ」

 

 ウダウダ長く話しているのも無駄だ。僕は一番の核心を告げる。


「うむ……」


「君は自分の魂を分けて、その魂を何らかの方法で捻じ曲げ人間を作った。魂の入っていない抜け殻が僕の中に入ってきて、僕の魂が増えたのはそれが理由だ」


「くくく……素晴らしいではないか。確かに我は魂を物体へと変質させることが出来る。梨々花にも魂だと認識出来ない物質をな」

 

 目の前の僕は心底楽しそうに話す。


「今の僕も同じだ。この肉体も魂を割って作ったのだろう」


 今、僕の魂が入っているこの肉体も目の前の男が自分の魂を分けて作った肉体なのだろう。


「それで……わざわざ僕の魂をここに持ってきてどういうつもりなの?わざわざ乙女ゲームを地球に送り込むなんて言う面倒なことまでしてさ」

 

 梨々花がやっていた乙女ゲーム。

 あれを作ったのは目の前の僕だろう。

 異世界で乙女ゲームを作って、地球の方へと転送して売る。そうすることで前提知識をつけさせ、物語をスムーズに進めようとしたのだろう。

 物を世界と言う大きな壁を超えて運ばせる……それが魔法で出来るのは実際に確認済みである。


 異世界でゲームを作って、地球に送って、プレイさせて、前提知識をつけたから異世界へと召喚する。

 こんな面倒なことをしてまでしたかったことって何なのだろうか?


「くくく」

 

 目の前の僕は僕の言葉に対して笑顔を漏らす。


「最後の最後で読み違えているな……我は理央よ。アルベトなどこの世界におらん」


「……え?」


 僕は目の前の僕を聞いて驚愕の声を漏らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る