第4話

「ちょっとッ!?どういうことなのよッ!?」

 

 女性が僕の方へと掴みかかってくる。


「記憶喪失って!一体それはどういうことなの!?」


「何だ?言葉の意味すらも理解できなくなったと言うのか……?(え……?言葉通りの意味なのですが……記憶を喪失するで、記憶喪失。……あ、喪失って言葉の意味がわかりませんか?)」

 

 僕は女性の言葉にそう答える。

 というか、そう答えるしか無い。


「そんなことわかっているのよ!」


「……?」

 

 わかっている?なら何で疑問形での言葉になるんだ?

 ……僕が知らない間に人間の文法が変わったのだろうか?

 

「ただ!あなたの言葉に嘘があるかもしれないし……それに!私が聞きたいのは記憶喪失になるまでの経緯よ!記憶喪失の言葉の意味じゃないわ!」

 

「……!」


 なるほど。

 そういうことね。

 『それはどういうことなの?』って言っていたから記憶喪失が何なのかわからないかと思った。


「経緯など我は知らんし、興味ない。数ヶ月前に突然何も知らぬ場所に居て、それから我は我の思うままに生きていただけでしかない(経緯……といわれましても本当に記憶がないのでお答えしかねます。突然、数ヶ月前に何も知らない場所に居て、そこから四苦八苦しながら生きていきましたので)」


 僕は女性の言葉にそう答える。

 というか、こう答えるしかない。だって本当に覚えていないのだもの。

 

「え?え?え?……もしかして人違いだった……?あの監獄から脱獄出来たっての元々考えにくいことだし……。いやいや、人違いなわけはないわ。……あれだけ似ているのよ……?人違いなわけがないじゃない」

 

 ブツブツと目の前の女性が考えこみ始める。


「あぁ……そういえば。あなた、記憶喪失ってことは私の名前も知らないのね……私はアレリーナ。……なんであなたにもう一度自己紹介をしなきゃいけないのよ」

 

 女性、アレリーナはブツブツと文句を言いながら、僕へと自己紹介を行った。

 なるほど……アレリーナね。良し。覚えた。

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