第3話

「……何をしているの?」

 

 ゆっくりと進む場所の中……ボソリと女性が呟く。


「む……?劣等種程度には何をしているのか理解出来ぬか(え?わかりませんか?)」

 

 僕がしているもの。

 それはあやとりである。

 魔力で糸を作って、それをあやとりのようにして操って遊んでいるのである。

 楽しい……国民的アニメの主人公であるメガネの男の子レベルであやとりが出来るようになりたい……。


 ちなみにこの場にいるのは僕と女性だけだ。

 レイン、ニーナ、レルと離れたのは久しぶりである。いつものようにレインがピッタリと側にいて、ニーナがへばりついていないのに違和感を覚える。


「見ているものが信じられなくて聞いているのよ……何をしているの?本格的に理解出来ないわ」

 

 女性が呆れたように呟く。


「……なぜわからぬと言うのか。ここまで劣等とは……(( ˘ •ω• ˘ )しゅん)」


「喧嘩売っているのかしら?」

 

 僕の言葉に対して女性は青筋を立て始める。


「ふふふ……よくもまぁ、私に対してそんな態度を取れるじゃない。これっぽちも反省していないのね」

 

 女性が僕に怒りのこもった視線を向ける。


「そもそもの話、我は記憶喪失でここ数ヶ月の記憶しかないのでな。何も知らぬ状態で反省も何もなかろうて(すみません……実は私は記憶喪失で、数ヶ月の記憶しかないのです。ですので、私が何をやってしまったのか。わからないのです……何もわからないままでは反省することも難しくてですね……)」

 

 僕は完璧な言い訳を女性へと告げる。


「は?」

 

 それに対して女性は半ギレで言葉を返してくる。


「やはり所詮は劣等種か……。聴力まで劣っているとは。我は記憶喪失である。ここ数ヶ月の記憶しかないわ(あっ。聞こえなかったですか?僕は記憶喪失で、ここ数ヶ月の記憶ないんですよね)」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!?」

 

 目の前の女性が大きな声を上げて叫んだ。

 ……うるさいのだが……。他人への迷惑も考えてほしいよ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る