第10話

「す、すみません……ちょっとカッとなってしまいまして」

 

 レインが女性に向かって深々と頭を下げる。


「え、えぇ……大丈夫ですよ」

 

 それに対して女性が引き攣った笑いでそう言葉を返す。

 よし!これで関係は改善、仕切り直しだね!


「ふむ……それでは、自己紹介とでも行こうか。我はアンノウン。好きに呼ぶが良い、汝ら劣等種がどういう態度を取ろうが我は怒ったりなどせぬからな(さて、それでは互いにはじめましてですし、自己紹介から行きましょうか。私の名前はアンノウンと申します。……分け合って偽名を名乗っていますが、気にしないください。お好きなように呼んでください)」


 僕は自己紹介を行い、深々と頭を下げる。


「え?あ、はい。よろしくおねがいします」

 

 女性は困惑したような表情を見せつつも僕の言葉に頷く。

 ……やっぱり僕のこの口調に対して丁寧な体の動きには困惑するよね……。


「私はレインと申します。先程の件は失礼しました」

 

 僕の自己紹介に続いてレインも自分の名前を名乗り、再び頭を下げる。


「私はニーナ。……パパには触れないで」

 

 いつの間にか降りてきていて、僕へとへばりついていたニーナが簡潔に自己紹介を済ませる。

 さっきからなんで二人は目の前の女性が僕に触れることに対して拒絶を見せるの?独占欲か何かなの?

 別に僕は二人の物ではないんだけど……。


「え、あ、はい」

 

 ニーナの『パパには触れないで』という言葉に困惑しつつも


「それでは私の自己紹介ですね……私はアレイスター帝国皇帝家第五皇女、レルヘスト・アレイスターと申します。お気軽にレル、とでもお呼びください。……此度は魔族の手から救ってくれてありがとうございます」


 女性、レルがきれいで美しく、カッコいい挨拶を行う。

 あ、またお偉いさんの一族の人だー。


「まぁ……!」

 

 レルの自己紹介を聞いてレインが反応を見せる。


「あなたが皇帝家の最後の切り札と呼ばれている最終兵器ですか」


「ははは……最終兵器と言えども魔族相手に無様に敗退した弱者に過ぎませんよ……未だに切り札と呼ばれている所以たる力を使いこなせていませんから」

 

 レインの言葉に対してレルが苦笑する。

 なるほど……確かにレルの体の奥底にものすごく強い力が貯まっているね……本当にびっくりするくらいの力が貯まっているね。

 ……んー。この力を操るのにはレル自体の体がちょっと弱すぎるかな?

 帝国が一体何を作ろうとしたのか全然知らないけど……失敗していない?これ……普通に。

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