第31話

「ほう……あの魔物が己の父だと?(ほえ?)」


 僕はボソリと呟かれたニーナの言葉に驚愕する。


「う、うん……見た目はそう。私のお父さんなの……」

 

 ニーナは戸惑ったように、困惑したうような表情を浮かべている。


「……た、確かに……あの姿はあの人じゃないか?」


「はっ!?」


「なっ……!一体あの人は何をやっているんだ!?」

 

「八年ぶりくらいか……?」


 ニーナの言葉。

 それに対して周りの冒険者たちは納得したかのように言葉を上げ、そして次に上がるのは困惑の声だ。

 ニーナのお父さんってば有名な冒険者だったのかな……?


「ふむ……では他の魔物共と同じくあの劣等種も汚染されたのだろう。亀のような魔物共の周りには愉快なものが渦巻いておった。大方迷宮から出た未知のエネルギーが悪さでもしているのではないか?くくく。実に興味深い(それではニーナのお父さんも他の魔物たちと同様に汚染されてしまったのでしょう。亀と混ざりあったようなおぞましい魔物たちと似たような気配を感じます。恐らくですが、何らかの形で迷宮から放出されたエネルギーのようなものが悪さしているのではないでしょうか?)」

 

 多分あっているだろう。

 あの男から感じる力も、亀と混ざりあったような魔物から感じる力も相当なものだ。

 馬鹿デカくてびっくりするくらいのエネルギーが渦巻いている迷宮でないとこれくらいの力を出さないだろう。


「な、なるほどな……」

 

 それに対して周りにいた冒険者たちがわかっているのか、わかっていないのか曖昧な言葉を口にする。


「……ァァ」

 

 ニーナのお父さんは半分溶けている口を開けて良くわからないうめき声を上げている。

 口からぐちゃぐちゃな肉塊をはみ出させながらその場を動きだそうとする。


「動くなたわけ(急に動き出そうとしないでください)」

 

 僕はそれよりも先に鎖を展開してニーナのお父さんを拘束して動きを封じる。


 ジャラッ!


 うーん。思ったよりも力が強いな。

 封印術も発動してガッチリとニーナのお父さんの動きを止める。

 これで良し。


「して、汝はどうしたい?助けるか?……それとも殺すか?(それで、ニーナはどうしたいでしょうか?あのまま……殺してしまってもいいでしょうか?それとも奇跡を願って助けられるように努力しますか?)」

 

 僕はニーナの方へと視線を向ける。

 藁にすがるようなものではあるが…一応助けられる可能性もある。

 だからこその疑問だ。


「……」

 

 それに対してニーナは沈黙を保つ。


「……パパはずっと一緒に居てくれる?」


 ニーナは僕の方へと視線を向けて、尋ねてきた。



 あとがき

 限定公開の近況ノートでニーナちゃんがアルベトに依存するようになった経緯について詳しく書いてみたから良かったらサポーターになって見てみてね!

 多分だけど、本編でもいつかサラッと触れると思う。

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