第32話
「汝がそうであれと我に望むのであればな(ニーナがそう望むのであれば構いませんよ)」
僕はニーナの言葉に答える。
「なら、良いよ……殺すので。パパがいるから。……あの状態のお父さんを戻すのは大変そうだし……それに戻ったとしても前みたいに生活出来るかはわからないし」
そう言ってニーナは顔を僕へと擦りつけて笑う。
……そうだ。もしニーナのお父さんが生き残ったとしても人間をむしゃむしゃ食べていた記憶は残ったままだ。
それに生き返らせる過程で確実にニーナのお父さんには激痛が走るだろう。
もし治ったとしても廃人になっている可能性の方が高い。だからこそ僕は躊躇しているのだ。
何でかはわからないけど僕はどんな奇跡でも起こせるという自信がある。
……だけどこの亀になったものを元に戻すのは……出来るかどうかわからない。そんな感がある。
「ずっとパパが居てくれるなら何も要らないよ?パパだけ……パパさえ入れば何も……」
……ハイライトのない瞳のまま告げられるニーナの言葉。僕はそれを前に何とも言えない悪寒が走る。
「であるならば何の問題はないな。我が居なくなることなどあり得ないからな(……それでしたら良いですね)」
僕はニーナの言葉に頷き……ニーナのお父さんを雁字搦めに縛っていた封印と鎖を開放する。
僕の封印は強力。
封印によって状態が固定されているニーナのお父さんを傷つけることは今の僕でも困難だった。
鎖も攻撃を当てる邪魔でしかない。攻撃が鎖に当たって弾いてしまう。
「アァ───ッ!!!」
僕が封印と鎖を開放したその瞬間に、ニーナのお父さんは地面を強く蹴る。地面が陥没し、地震かと勘違いするほどの大きな振動が起こる。
ニーナのお父さんは地面を抉りながら凄まじい速度で僕の元へと駆け寄ってくる。
「くだらぬ(遅いですよ)」
僕はニーナのお父さんの口へとレールガンの銃口を突っ込んでそのまま床へと叩きつける。
その衝撃でさらに大きく地面が陥没し、地震が起こる。
速いと言っても一般人から見て、という話だ。僕には止まっているように見えた。
「これで終いだ(さようなら)」
僕は引き金を引く。
バンッ
レールガンが火を吹き、ニーナのお父さんの頭を吹き飛ばす。
弾丸を放つために流している魔法の雷がニーナのお父さんにも流れ、全身を焼き焦がす。
レールガンの一撃は確実にニーナのお父さんの命を奪った。
「……ァア……」
ニーナのお父さんの体が光となってゆっくりと消えていった。
「ふへへ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます