第30話

「ほう。ここでも相まみえるか(ほえ?)」

 

 僕の大砲。

 それに耐えるような魔物がパラパラと現れ始める。それらの魔物は確か……ダンジョン90階層〜99階層まででよく見た魔物だ。


 だが、僕の前に再び姿を見せた魔物たちは僕の知っている姿ではなかった。

 あのオークのように歪で……その魔物たちはまるで亀と混ざりあったかのような姿をしていた。

 亀と混ざりあったような歪な魔物たちは、平時よりも遥かに多くの魔力をその体に有していた。

 100階層にいた金ピカのミノタウロスよりも強そうである。


「なっ……何なんだこいつは!?この禍々しい姿は……」

 

 その歪な魔物の姿に周りの冒険者たちも慄き始める。


「こ、これが上位の階層の魔物なのか?」


「こんな醜悪なわけがあるまい。まったく薄汚れ、穢れた存在よ(いいえ。僕が出会った魔物の中にこんなおかしな形をした魔物は居ませんでしたよ)」


「そ、そうなのか?」


「我が嘘などつくはずもないだろう」

 

 周りの冒険者たちに対して僕はそう答える。

 禍々しい感じの姿には驚かせるけど……それでも大砲の一撃を二、三発も受ければ消し飛んでいく。

 くくく。僕の必殺技である『悪天奉還』に二度も耐えられる奴などいないのだよ!……別に悪天奉還は必殺技でもなんでも無いけど。ただただ適当に作っただけの技だけど。


「パパー!!!」


 僕が魔物を償却するだけの作業を行っていると、腰に衝撃が走る。


「ニーナか。如何用だ?(ニーナですか。一体何の用でしょうか?……ここは危険な感じがするので避難していたほうが良いと思うのですが……)」


「パパと一緒にいたいの!離れ離れは嫌!」

 

 ニーナはそう話し、グリグリと僕のお腹に頭を擦りつけた。


「であるか。ならば好きにしているが良い」(そういうことですか。ふふふ。では、一緒に居ましょうね)」

 

 僕は左腕でニーナの頭を撫でる。


「ふへへ」

 

 それに対してニーナは頬を緩ませた。


「……なんでほっこりしているんだ?」

 

 既に弛緩していた空気感はニーナの登場によって完全に破壊された。

 

「む?」

 

 そんな中、ダンジョン中から異彩の雰囲気を纏う一人の魔物が出てくる。


「くちゅくちゅ」


 まるで人間のような体を持っていて、体のところどころが亀のようになっている。亀人間とでも言おうか。

 そんな魔物の手には人間の死体が握られていて、口元からは人間の指がはみ出している。


「な……なんだ、あれ……」


「き、気持ち悪い……」

 

 人を食らう魔物を前に他の冒険者が慄く。

 そんな中。


「お父……さん?」

 

 ニーナがボソリと呟いた。

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