第26話

「すぅ……すぅ……すぅ……」

 

 疲れ果てて眠りこけってしまっているニーナの頭を撫でてから僕は朝ごはんを作るためにキッチンの方へと向かっていく。


「ニーナちゃんがまた裸になっている……またニーナちゃんを泣かせる悪い人が来たの?」


 一番最初に起きてきた女の子が泣きそうな表情を浮かべて僕の方へと来て尋ねてきた。

 この女の子はこの孤児院の中で二番目に年齢が高くて、しっかりとしている女の子である。


「そんな訳無かろうが。我が城への侵入者など、この我が許すはずがなかろうて。ただ少し我とぐっすり眠るための運動をしたに過ぎん(いえ。悪い人なんて来ていなと思いますが……ニーナを泣かせるような悪い人を孤児院に入れるなんて僕が絶対にさせないので安心してください。少しだけ僕と一緒に寝る前の運動をしただけです)」


「ほんと!良かった!……そっか、ニーナちゃんは……ようやく」

 

 僕の答えに対して女の子は嬉しそうに、安堵したかのように破顔させる。

 ……なんでこんなことでこんな反応をするんだ?訳がわからない。一体何を考えているのと言うのだろうか。

 

「汝らへの我の寵愛がもうすぐで完成する。それまで大人しくしているが良い(後少しで朝ごはんが出来ますので、それまで大人しくしていてくださいね)」


 女の子へと僕は笑顔を浮かべる。

 今の僕は仮面をつけていない状態なので、ちゃんと笑顔を見せることが出来ている。


「わかった!」

 

 僕の言葉に対して元気よく女の子が頷く。

 うんうん。素直なのはとても良いことだね。

 

「(ふんふんふーん)」

 

 僕は気分によく、手際よく調理を続ける。

 少しもすれば僕は朝ごはんを作り終える。


「我からの恩寵だ。ありがたく受け取るが良いわ(朝ごはんが出来ましたよ)」

 

 僕は大量に作ったサンドイッチをテーブルの上に置く。しっかりと全員分作っている。

 僕が朝ごはんを作り終えたときにはもう既に4分の3くらいの子供たちが起きていた。


「わーい!いただきます!」


「いただきます!」


「いただきまーす!!!」

 

 子供たちはサンドイッチの方へと群がり、元気よく告げる。

 いただきます。

 この言葉を告げる文化はこの世界になかったのだが、


「はふはふ。美味しい!」


 元気よく食べている子供たちを見ながら自分も食べようとサンドイッチへと手を伸ばしたその時。


「すみません!」 


 冒険者ギルドの受付嬢さんが孤児院へと転がり込んできた。

 あっぶな。慌てて仮面を被ったから見られなかったけど……あとちょっとで見られていたんだけど?

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