第23話

 歪の魔物。

 そこにいるのは僕が見たこと無いくらいおかしな見た目をした魔物。

 おそらくそこにいる魔物はこの階層でよく見かける魔物であるオークであると思われる。

 薄橙の肌、長い腕、湾曲した脚、イノシシのような牙と豚のような鼻を持っている魔物だ。知能は一応あるらしいが、極端までに低い。

 

「な、何あれ……怖い」

 

 ニーナが僕の袖をそっと掴む。

 

「くくく、面白いであろう?(そうですね……)」

 

 そんなオーク。

 ただのオークを見ただけであればオークの頭を気持ちよさそうに飛ばしているニーナは恐怖しない。

 目の前にいるオーク。

 それは普通とはかけ離れた見た目をしていた。

 背中には亀の甲羅のようなものが生えていて、立派で湾曲している足のうち右足はまるで亀のような足となっている。

 そのせいか体を地面へと倒している。

 顔も特徴的な牙と鼻がわからなくなるくらい……溶けていて、体も捻じ曲がっている。

 これほどまでに醜悪な見た目をした

 

「……ァア……」

 

 溶けてわかりにくなったオークの口から微かな声が漏れて聞こえてくる。


「気持ち悪い……」

 

「まぁ、そうであるな。これほどまでに醜悪で珍妙な生命体も他にはないであろうな()」


「アァ……ァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!}

 

 醜悪なオークの甲高い音がこの場に響き渡る。

 ……耳が痛いんだけど……ムカつくな。うん。


「ァ?(え?なにこれ?)」

 

 オークの体から謎の触手が生え、僕の方へと向かってくる。

 ……え?本当に何これ?


「パパに何しているの?」

 

 ブォン!!!


「パパに触れていいのは私だけだから」

 

 僕の方へと伸びてきていた怪しげな触手……それは簡単に吹き飛ばされていった。

 ニーナのフルスイングによって。


「ほう……(ほえ?)」

 

 え?え?え?

 ……え?

 ニーナ……さっきまで僕の後ろで震えていたじゃん。なにあれ?びっくりするくらい俊敏に動いて触手を吹き飛ばしたじゃん。……え?一切動じないじゃん。

 びっくりなんだけど……。

 

「ァ?」

 

 ほら見てよ。もはやオークなのかわからなくなるくらい見た目がおかしくなっちゃったオークが困惑しているじゃん。


「お前ごときがパパに触れるな。死ね」

 

 ニーナは一切の躊躇なく醜悪すぎるオークへと棍棒を叩きつけた。

 頭が潰れて息絶えた醜悪すぎるオークは光へと姿を変えた。

 ……?なんだ?上へと登っていく光と下へと降りていく光の二つある……?普通は上へと登っていく光しかないのに。

 というか、光となって消えるの早くない?こんなに早いと素材取れないんだけど……。


「じゃあ、先に進もうか!」

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