第7話

「出来、ますか……?」

 

 ニーナが僕の方を見上げて不安そうに告げる。


「世迷言を抜かすな。我に不可能などあらず。すべて任せるが良い(大丈夫です。安心してください)」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 僕はボロボロのベッドの上に寝っ転がり、息を荒らげている少年へと手のひらを向ける。


「さっさと起きるが良い(治ってください)」

 

 一言。

 魔力を乗せて僕は一言だけ告げる。……これだけで十分だった。

 

「はぁ…………すぅ……すぅ……すぅ」

 

 荒れていた少年の息が落ち着き、険しかった表情も柔らかくなってくる。


「……アレン?」

 

 目に見えて良くなった少年を見てニーナは呆然と声を漏らす。


「これで良いだろう。既に完治している(はい。これでもう大丈夫なはずですよ)」


「あぁ……良かった」 

 

 僕のその一言を聞いたニーナは安堵からか体を崩れさせた。


「ほんと!?アレン治ったの!?」

 

「すごーい!!!」


「仮面の人ありがとう!!!」

 

 そしてそれと同時に多くの子供たちが嬉しそうに言葉を話し、僕の方へと集まってくる。

 ……今、ここにいる子供たちの多くは幼い。

 少女、としか言えないまだ中学生くらいにしか見えないニーナよりも幼い子供たちばかりであり、ニーナよりも年上そうな子は存在していなかった。


「騒ぐな騒々しい(皆さん、騒ぎすぎですよ)」


「「「……」」」

 

 僕は子供たちに向けて一言告げる。

 それだけで子供たちはピタリと話すのを辞める。


「日は既に陰っている。さっさと寝ると良い劣等種共(既に時は遅い時間です……もう寝る時間ですよ……目も赤くなっていますよ)」

 

 僕は子供たちに向かって告げる。


「「「うん!」」」

 

 それに対して子供たちは頷く。

 僕の傲慢不遜ボイスに腹を立てることもなく大人しく素直に行動を始める。

 子供たちはみんなその場で横になる。

 硬い地べたの上に横になり、なにもかけずに眠り始める。僕は子供たちが寒い思いをしないように魔法で温めてあげる。


「ありがとう……ございます」

 

 僕の後ろでニーナは告げる。

 その姿勢は……土下座のようなスタイルであった。


「頭を上げろ、劣等種。王たるこの我から目を離すことなど許さん(頭を上げてください……子供がそんなことをするものではありませんよ)」

 

 ニーナに頭を上げさせる。

 僕がニーナに頼まれてついてきた場所。

 そこは小さな孤児院。

 ボロボロの建物で、まともに生きるための物もないような場所。

 ……そして、誰も大人がいないような状態、ニーナが運営している孤児院だった。

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