第37話
「ここが私がアンノウン様のため用意にした塔です」
長い廊下を抜け、王城の中に建てられた一つの塔にたどり着く。
おぉー。
僕は目の前に広がっている空間を見て心の中で歓声を上げる。
「どうでしょうか?派手すぎなくて、洗練されたデザインにしたつもりですが……」
「ふむ。素晴らしい出来である。実に大義であった(素晴らしい出来だと思います。わざわざ僕のためにありがとうございます)」
広がっているのは白を基調とした空間であまり輝いてはいない。
さっきまで居た王城はキンキラキンで、高そうなツボだとか絵だとか鎧だとか宝石だとか。
たくさんの貴重品が普通にただの廊下に置かれていた。
これで壊してしまったらどうしよう……など、色々なことを考え、ビクビクしていたため、意味もなく疲れてしまっていた。
……最初は良かったが……あそこにずっと居るとなると負担だろう。
「ふふふ。ではご案内しますね」
扉を閉めたレインが楽しそうに告げる。
「まずはこちらですね」
レインが笑顔でそう話し、歩を進める。その後に僕はついていく。
僕とレインは質素ながらも丁寧な作りとなっている塔の内部を歩き始めた。
この塔にあった施設。
キッチン、広い図書館、洗濯所、トイレ、ロッカー、ソファやテーブルの置かれたメインルーム、ベッド。
ここだけで何の問題もなく生活出来そうな空間が広がっていた。
「ふふふ。どうでしたでしょうか?」
「うむ。よき造りであるな。ここであればどんな人であっても何の問題もなく生活することが出来るだろう(とても素晴らしい場所ですね。……ここだけで生活出来てしまいそうです)」
「ここで暮らしてもらっても構いませんよ?……食事も全てこちらで用意致しますし、何不自由無い生活を送られるように補償致します」
「ほう(本当ですか?)」
……食事も全て王家持ち……。
詐欺を疑うところではあるが……今の僕は一切素性の知れない強者。
僕を閉じ込めておきたい、と思うのも不思議ではないか。
「どうでしょうか?」
「我のために用意したのであれば……それに答えてやろうではないか(よろしいのであればぜひお願いしたいですね)」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
レインが僕の言葉を聞いてお礼を告げる。
……なんでレインが僕にお礼を言うの?逆じゃないか?
まぁ、良いや。
ここがこれからの僕の住まい。あの小屋よりもよっぽど良いだろう。
唯一。
一つだけ気になることがあるとするのならば一切窓がなくて外を見ることが出来ないことだろう。
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