第36話
長い間馬車に揺られてたどり着いた場所。
僕はそこを目にして言葉を詰まらせる。
「うむ。立派な巨城ではないか(こ、ここ……ですか?)」
目の前に広がっていた光景。それは圧巻。この一言であった。
写真とかでなら見たことある……ヴェルサイユ宮殿のような華やかな王城がそこにはあった。
びっくりするくらい広く人工的に作られた川も流れているような庭園に、一体これを作るのにいくらかかるのか考えたくもないようなド派手で、美しい宮殿。
ほ、本当に一体どれくらいのお金をかけているのだ?凄すぎて皆目検討もつかない……。
「自慢の宮殿です。せっかくなので歩きませんか?」
「良いだろう」
僕は馬車へと降り、レインへと手を差し出す。
「……っ!ふふふ。ありがとうございます」
僕の手を取ったレインはお礼を言いながら馬車を降りた。
「それでは行きましょうか」
「うむ(はい)」
僕とレインはゆっくりと庭園を歩く。
聞こえてくる川の流れる音に木々のさざめき声。
鼻孔をくすぐる鼻の香りに、美味しい空気。
あたりを舞っているきれいなちょうちょたち。
楽園とも言えるような場所がここにはあった。
……中世って確かトイレがなくて道端でうんこするような世界だと聞いていたから臭いことを覚悟していたのだけど……全然そんなことはなかった。
「ふふふ。きれいでしょう?アンノウン様が来るときのためにちょっと掃除させたのです。アンノウン様より聞いた話を参考にさせてもらったんですよ」
ふぅむ。一体何のことを指しているのだろう?
結構色々なことを話した気がするし……何のことを指しているのか、僕にはわからなかった。
「ようこそ。私の王城へ」
そして、僕達は王城の巨大な扉の前に止まる。
「王族たるか?(この国の王族だったのですか?)」
「はい。私はこの国の第一王女であり、次期女王です」
僕の言葉に対してレインは笑顔で頷いた。
……次期、女王……。僕は予想以上の立場の重さに驚愕する。そ、そんなに偉い人だったんだ……。
僕が驚愕するのと同時に巨大な扉がゆっくりと開いていく。
「「「おかえりなさいませ」」」
扉の向こうにいるのはたくさんの執事、メイドたち。
彼ら、彼女らは僕たちに向かって深々と頭を下げる。
華やかな世界が僕を迎え入れた。
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