第24話
「仮面の兄ちゃん!たこ焼きを一つ!」
僕の目の前に立っている男が僕へと告げる。
「よかろう。我が下賜してやるのだ。末代まで感謝すると良い(かしこまりました)」
僕は鉄板で美味しそうな匂いを漂わせながら焼かれているたこ焼きを8つ、たこ焼きピックで取って容器に入れていく。
そして鉄板の横に置いてあるソースとマヨネーズをたこ焼きへと豪快にかけ、鰹節と青海苔を散らしていく。
これでたこ焼き完成。
ホクホクのたこ焼きだ。鰹節が元気に踊っている。
「受け取るが良い(はい。お待ちどおさま)」
僕は完成したたこ焼きを目の前の男に渡す。
「おう。あんがとな!」
僕からたこ焼きを受け取った男はホクホク顔で去っていた。
「はい!私もたこ焼きを一つ」
「よかろう。我が下賜してやるのだ。末代まで感謝すると良い(かしこまりました)」
そして新しくやってきた女性も元気よく僕へと告げた。
それに対して僕はさっきの男同様の手順でたこ焼きを容器に入れ、女性に渡してあげる。
たこ焼きを作れるようになってから早三日。
僕は冒険者からたこ焼きを売る屋台の人となっていた。
こうなった経緯は簡単で、僕が自由に料理出来るスペースでたこ焼きを作っていたら人が集まってきて、売って欲しいと言われて売り出し……それが大きく流行り、僕は屋台を持つまでになっていたのだった。
こういう経緯で僕は上流階級仮面傲岸不遜俺様たこ焼き職人となったのだった!
「受け取るが良い(はい。お待ちどおさま)」
僕は目の前の女性にたこ焼きを渡す。
その後に来るのは別のお客さん。
僕のたこ焼きの屋台には長い行列が出来ていた。
ちなみにだが、僕の口調も街の人から受け入れられつつある。
僕の着ている服が貴族そのものだし、赤王の悪魔を倒した僕の実力も広く知れ渡っている。
そのため、
……今、僕の屋台に並んでいる奴らはこのたこ焼きに赤王の悪魔の触手が入っているとはこれっぽちも思っていないだろう。
くくく……。
いつかタコの天ぷら、タコの酢の物、タコ煮、タコの刺し身。
これらを波及させて赤王の悪魔を食料へと変えてやるぜ……!タコ!タコ!タコ!
「受け取るが良い(はい。お待ちどおさま)」
僕は次々と来るお客さんにたこ焼きを渡していく。
どうなるかと思った僕の異世界生活……たこ焼きを売る屋台の男として上手くやっていけそうであった。
このときの僕は知らない。
幸運を呼び寄せたこのたこ焼きの匂いが……呼び寄せてきてしまうものについて……。
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