第20話
「赤王の悪魔の討伐。感謝する」
目の前のギルドマスターが僕に向かって深々と頭を下げる。
「うむ(冒険者として当然のことをしたまでです)」
赤王の悪魔。
それがあの空飛ぶタコの名前である。
ものすごい仰々しい名前だ。
「これが謝礼金だ」
「うむ。……確かに(ありがとうございます)」
ギルドマスターが僕に金貨がたっぷりと入った袋を渡してくれる。袋の中だから実際に何枚くらい入っているかは数えられないが……かなりの量は入っていそうである。
……。
…………。
はてさて、この金貨は一枚、一体何ベルクなのだろうか……?
この街へとやってきてから早三日。
僕は未だに貨幣制度についてよくわかっていなかった。
鉄価、銅貨、銀貨、金貨、白金貨。
これらを貨幣として、流通しているのだが……未だに僕はこれらが何ベルク硬貨なのかはわからないままだった。
そのせいで未だに買い物をすることが出来てないなかった。
おかげで僕はまともな食事を出てきていない。
森の中に生えている木の実やきのこで飢えを凌ぐ日々だ。
食べれるか、食べられないかを判別する魔法がなければ僕は今頃毒きのこを食べて死んでいたかもしれない……。
「それで素材のことなのだが……」
「あれは既に我の物だが?(あれは自分がそのまま頂きます)」
タコだけは渡せない。
あれは僕の重要な食料なのだ。
決して!譲ることは出来ない!!!
「……?あぁ、貰ってくれると言うのならありがたい。あれは素材としての価値がないからな」
「うむ(そうなんですね。あれは私の方で回収します)」
僕は心の中でほっと一息つく。
あれを寄越せと言われたら……色々と考えなきゃいけないことになりそうだった。
「して、他に用はないな?(要件はこれだけでしょうか?)」
「あぁ。そうだ。わざわざ呼び出してすまなかったな」
僕はあの空飛ぶタコを倒してすぐに冒険者ギルドの職員に冒険者ギルドへと来るように言われて、こっちまで来たのだ。
「構わぬ。我は寛大である故(いえいえ、構いませんよ)」
「それはありがたい。……それで、今日は依頼を受けていくだろうか?」
「受けぬ(あぁ、受けません)」
依頼なんかよりもよっぽどタコの方が重要である。
「了承した。それではもう帰ってもらって構わない。改めて、迅速な対応感謝する。おかげで死傷者を出さずに済んだ。本当にありがとう」
「うむ(それでは失礼しますね)」
僕は席を立ち、冒険者ギルドから退出する。
ふふふ。
久しぶりのまともな食事だ!!!
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