第18話
「なるほど……そうですか」
イルミ王国の第一王女である美しい少女、レインが中央騎士団団長の報告を聞いて頷いた。
「すみません……有力な情報をお渡しすることが出来ず」
中央騎士団団長はレインに深々と頭を下げる。
「いえいえ構いませんよ。最初からすぐに有力な情報を得られるとは思っていませんでしたから……ふふふ」
レインの口元に心底嬉しそうな笑みが浮かぶ。
「第一王女殿下……?」
そんなレインを見て中央騎士団団長は首を傾げる。
「あぁ、お気にならさず。それで?国境であの御方を見つけることは出来ましたか?」
「いえ、まだそのような連絡は来ておりません」
「わかりました……それでは、これからも捜索を続けるように」
「はっ」
中央騎士団団長はレインの言葉に頷く。
「では引き続き任務を続けるように」
「はっ」
中央騎士団団長はレインの言葉に頷き、部屋から出ていった。
「ふふふ」
一人になったレインは笑みを漏らす。
「あぁ……あなた……。私のことを守ってくださったのですね……」
レインは森で発見された暗殺者たちの報告を思い出す。
あの森に倒れていた暗殺者たち。
おそらく自分を殺すために送り込まれた刺客であろう。
仮面の男はレインを守るために彼らと熾烈な殺し合いをしてくれたのだろう。あぁ……!自分のために!
レインを助けた。それを誇示してレインに近づいてこない。
こんなこと初めてである。
レインに執着していない。レインを愛していない。
初めて……初めて……純粋な善意を向けられている。それがレインにとって何よりも嬉しかった。
「ふふふ……必ず……必ず見つけます……何処に行こうとも……必ず。ふふふ」
イルミ王国のアイレンテ公爵領の中心地。
アイレンテ公爵家の屋敷の一室にレインの笑い声が響き渡る。
……。
…………。
彼女は知らない。
探している仮面の男が自分と同じ街にいるということを。
仮面をつけていて名前も名乗らずに立ち去ったという情報から、仮面の男は表舞台から姿を隠している世捨て人であると勝手に思い込んでいる彼女はまさか仮面の男が自分の後をつけていて、なおかつ自分と同じ街にいるとはこれっぽちも思っていなかったのだ。
それ故に、彼女はこの街での捜索を命じていなかったのだ。
だからこそ、この街にある冒険者ギルドのギルドマスターにも、街の治安を守ることを仕事とする取締騎士団の面々にも仮面の男についての情報が行っていなかったのである。
灯台下暗し。
今の彼女にこれ以上似合う言葉はないだろう。
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