第16話
「無理な話であるな」
僕はキッパリとギルドマスターの言葉を却下する。
申し訳ないのだけど、名前はまだ言いたくない。今、僕という人間がどういう状況に置かれているのかわからないのだ。
そんな状態で、自分の名前を話すのは憚れる。
「ふむ……それでは君の冒険者ギルド入りは認められないな」
「可能なのか?お前ごときに」
「……」
僕の言葉にギルドマスターは沈黙する。
「出来るのか?このよくわからぬ組織は強い者に首輪をつけるためのものであろう?お前ごときに我を冒険者ギルドに入れぬなどという選択を取れるのか?」
僕は淡々と話していく。
さぁ、博打と行こうじゃないか。
冒険者ギルドに首輪としての意味がなかった場合……僕は死ぬしかないんだけどね。
冒険者ギルドにはそれくらいの意味がありそうだけど……。国じゃ扱いきれないような人間、強者に対して冒険者という首輪をつける。
そのための組織として存在しているというのならば、各国から認められているというのもほんの少し理解出来るんだけど……。
「……なるほどな。実に正しい……正しい答えだ。確かに私に君を拒む権限など無いよ。ただ私が知りたかっただけだよ……。冒険者ギルドは犯罪者ですら受け入れるからね。本当に申し訳ない……」
……え?
僕はそれを聞いて驚く。
何?犯罪者ですら受け入れるの?え?なにそれ……怖い。普通に狂気やろ。
大丈夫なん?この世界怖いわー。意味がわからない。
マジで僕は冒険者ギルドという組織を理解出来ない。……本当に入っていい組織なのだろうか?
「ふむ(なるほど……)」
僕はなんとも言えない表情を浮かべて頷いた。
「申し訳なかったな……」
「構わぬ。我は寛大であるからな(あぁ、全然大丈夫ですよ。姿を隠している私の方が悪いですから)」
「それはありがたい。……私の方で君の冒険者登録は問題なくやっておこう」
「うむ。良きに計らえ(よろしくおねがいします)」
僕はギルドマスターの言葉に頷く。
「今日はすまなかったな。一応謝礼金を用意している。……要るだろうか?」
「我への献上。褒めて使わす(はい!ありがとうございます)」
「あ、あぁ」
「ではな(それでは失礼しますね)」
「あぁ、今回は我儘でここまで連れてきてしまって申し訳なかったな」
「良い。我は寛大だからな(いえいえ。気にしていませんから)」
僕は何もしていないのに貰えたお金にるんるん気分になりながら、冒険者ギルトを後にする。
冒険者カードは明日貰えるそうだ。
働いてもいないのにお金が貰えるって最高だよね!
……ところでこのお金って幾らくらいなんだろうか?
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