第15話

「私はここのギルドのマスターをしている者だ。少し、別室で話がしたいのだが」


「よかろう(構いませんよ)」


 僕は話しかけてきた一人の男の言葉に頷く。

 話しかけてきた男はスキンヘッドの頭にイカつい強面の男。

 身長も高く、筋肉量も多くてがっしりとしている。……これがギルドマスター。ここにいる誰よりも強そうだ。


「なるほど。それでは私についてきてくれ」

 

 ギルドマスターが僕へと背を向け、歩き始めた。


「ご苦労だったな。女子よ(ありがとうございました)」

 

 僕は受付嬢さんへと感謝の言葉を告げ、ギルドマスターの後についていった。

 

 ■■■■■

 

 僕はギルドマスター室と言う部屋にやってきていた。

 無機質な取調室のような場所とは違い、そこそこ大きな部屋で色々なものが置かれている。

 大きな棚だったり、執務に使っているであろう机と椅子。ソファーやテーブル。食器類や何かの記念品のようなバッチ、盾など。

 本当に様々な物が置かれている。応接室のようなものだろう。

 僕はこの部屋に置かれている柔らかいソファーに腰掛ける。

 ……うん。地球の人を駄目にするソファーほど柔らかくはないが、結構座り心地が良い。

 そんな僕の前にはギルドマスターが座っている。


「それで、君は全属性の神級魔法使いらしいが……」


 ギルドマスターが遠慮しているような声色で言葉を漏らし始める。


「我に出来ぬことなどない(どうやら、その用ですね)」


「なるほどな」


「我は暇にあらず。早急に要件のみを告げると良い(すみません。それで、何故私がここに呼ばれたのでしょうか?)」


「あぁ、了承した。そうだな。聞きたいことは唯一。君が何者であるか、ということだ。……流石に冒険者ギルドとしても誰とも知らぬ人間を歓迎するわけには行かぬ故にな」

 

 ……なんか僕を恐れている感じを出しているけど、結構はっきりと言ってくるのだな。


「ふむ。それで?(なるほど……そうですか)」


「君の目的と、本名、素顔を教えてほしい。……君が犯罪者である可能性もあるのだよ」


 ……。

 やっぱり言わなきゃだよねぇ。


「ふむ。実に面白い話だな」

 

 だけど、話す訳にも行かないだろう。

 一体僕がどういう経緯でこの国に来たのかわからないのだから。普通に国外追放されただけなら良いのだが……逃げてきた、とかだとかなり問題が発生する。

 ……いやまぁ、問題が発生するからこそギルドマスターも僕に情報を告げるように話しているのだけど。


「ふむ。ふむ」


 一体どこまで粘れるか……ちょっと試してみるとしよう。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る