第7話

「随分と貧相な格好をしているな。特別だ。我が直接お前に服を下賜してやろう(前、大丈夫ですか?今、馬車にある服を取りますね)」


 僕は自分の口から勝手に出ていくあまりにもな言葉に若干引きながら、馬車の方へと視線を送る。

 馬車には荷物が入っている木箱が乗せられている。

 あの男たちに荒らされたことによって木箱の中身が丸見えであり、木箱の一つに様々な服が入れられていることを僕は見ていた。


「ふむ(よっしょ)」 

 

 僕はどういう原理かはよくわからない魔法を発動させて、適当な服を見繕って彼女に覆いかぶせる。


「その布切れで自らの身体を隠すが良いわ(これを使ってそのきれいな体を隠してください)」


「あ、ありがとうございます」


 呆然として少女は慌てて僕に向かって頭を下げた。


「うむ。礼を言えるとは大したものであるな(いえいえ。全然気にしないでください)」

 

「えっ……あ」

 

 少女の言葉。

 それを聞いて他の二人も動き始めた。


「この度はありがとうございました」

 

 ドレスを着た女性が僕に向かって深々と頭を下げる。

 

「何かお礼を出来ると良いのですけど……」

 

「ほう。劣等種にしては素晴らしい心がけではないか(いえいえ。そんな申し訳ないです)」

 

 ……言いたいことと言っていることが真反対なのですが、それは。


「は、はい……えぇっとそれで」


「下らぬ。幾らお前が考えたところで我の欲するものなどわからぬよ。そうであるな。我は今。服がこれしかない。服を一つもらうこととしよう(あ、それでしたら服を一着貰えませんか?私はこの服しか持っていなくてですね)」


「あ、そのくらいなら構いません」


「うむ(ありがとうございます)」

 

 僕はそれを聞いてかっこいい服を一着拝借する。


「それも邪魔であるな(あ、それも邪魔ですよね)」

 

 三人にかけられている手錠に視線を送り、破壊する。……壊れろって願うだけで壊れるのだな。


「なっ!?封魔の鎖を!?」


 騎士らしき女性はそれに対して驚愕の声をあげた。


「さらばだ(さようなら)」

 

 僕がこの場を立ち去ろうとしたその時。


「待ってください!あなたのお名前はッ!?」


 少女の声が僕の背中へとかかってくる。

 

「何だ?貴様には脳がついておらぬのか?劣等種に教える名など無いと言ったであろう?(すみません。先程も言いましたが、名前が教えられないのですよ)」

 

 僕はそれだけを言い残してこの場を立ち去った。

 ……ふむ。僕は金輪際人と関わらない方が良いのかもしれない。与えた印象最悪すぎるだろう。

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