第13話 07時14分

 とりあえず久梨亜の顔に水ぶっかけて目を覚まさせるということと、顔洗い終了である。


「ずぶ濡れー」

「大丈夫だ。顔だけだ。制服は濡れないようにした」


 俺はそう言いながらタオルを取り――久梨亜の顔を拭く。


「ふぎゃああああ!?」

「動くな」

「見えない。前見えないからー」


 バタバタ暴れるガキの後ろに立って――ここから俺は仕方なく。ホント仕方なく。このままでは遅刻が確定なので、俺が超高速で久梨亜の髪などのセットを行った。まあこういうことはよくあるんでね。気が付いたら簡単なセットというか。まあ久梨亜の準備はできるようになった。俺が見て可愛かったら大丈夫だろう。そんな基準だがね。俺普通の人間だし。それに俺がセットした時はなんか――久梨亜学校でちやほやされている感じだからな。まあ俺のかわいいの基準は大丈夫なのだろう。ってか。これでも一応俺ネットとかで調べたからな。どうやってみんなしているのか。今は動画とかも出ているからそれを参考にしてな。うん。俺無駄に頑張ってる。時間短縮のために……。


「おおー」


 ちなみになんか後ろで見物人が居ましたが―—触れずである。拍手も聞こえたが触れない。そんなことを思いながら俺は最後の仕上げをする。


 パンパン。


「痛い!?」


 最後は久梨亜の両頬を叩いて完了だ。ここまで俺のセット。


「できたぞ」

「虐待だー」

「自分でしないからだ」

「痛いなーもう」

「知らん。っか。ほら朝ご飯食べに行くぞ。って俺は食ったから早く食え」

「いじめー。いじめだ」

「かわいいから問題なし」


 

俺はそう言うと久梨亜を洗面所から押し出す。


「……かわいい――」

「急に大人しくなるな。ほら。行く」

「あっ……うん」


 俺が久梨亜の背中を押してリビングに向かう。って――いつの間に久梨亜母はリビングでにこやかに座って待機していた。移動が速すぎる。忍者かよ。ってか。何で久梨亜は急に行動が遅くなるかな?押すの大変なんですが?


「あららまたイチャイチャしていたの?元気ねー。久梨亜はジャム何にする?」

「あんバター」

「……それは即答かよ」


 っか好きだな。その組み合わせである。久梨亜はパンの時、あんことバターがあるといつも決まったこの組み合わせだ。ってか。久梨亜は母の余計な言葉に触れもしないというね。顔色一つ変えず――だった。子もなかなかである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る