第12話 07時12分
何で久梨亜がリビングへ来ない?と思いながら洗面所へ向かう俺。多分着替えているということはもうないと思ったが。いや、制服の上に着る物ってないからな。でも――久梨亜の場合何があるかわからないので、話しながら俺は洗面所へと入って行く。
「久梨亜何してるんだ?時間かかりすぎじゃないか?」
俺が洗面所に入ると、普通に鏡の前に立っている久梨亜が居た。溺れているとかそんなことはもちろんない。ずぶ濡れ。寝ていたということもない。生きている。
「あっ。ゴウちゃんアホ毛が上手にできないんだよー。助けて」
「……」
以上。久梨亜がリビングになかなか来ない理由だった。
久梨亜は櫛を持ってなんか意味の分からないことを言ってきたので――俺が思いついた解決策と言えば――。
「——切る。そのアホ毛とかいう意味の分からの切ったら気にしないよな?」
「ちょ、ゴウちゃん!?」
俺はくるりと向きを変えて、久梨亜の母に「ハサミないですか?」と聞きに行こうとすると――俺の行動を察知してくれていたのか。たまたまか。いや、たまたまはないな。
「ゴウくん。ハサミあるわよー」
そう言いながら髪を切る時に使うハサミをちゃんと持って来てくれる久梨亜母。うん。こういう時は完璧である。息の合ったやり取りである。
「ありがとうございます。時間短縮できました」
「お役に立ててよかったわー」
俺はハサミをクリア母から受け取ると洗面所へと戻る。
「いやあああああああ」
俺の手にある物に気が付いた久梨亜が騒いでいるが関係ない。俺は近寄る。どんどん近寄る。そして久梨亜の目の前そして髪の毛。久梨亜が気にしているアホ毛?とやらを掴む。
「切ればいいな?気にしなくなるもんな?」
「ごめんなさいごめんなさい。ゴウ様!お許しをー」
「今日はふざけまくってるからな。そろそろ強硬策か。さようなら久梨亜のアホ毛」
「やっちゃえやっちゃえー。ゴウくんいけー」
「……」
なんか後ろから聞こえてくる声には……反応しなくてもいいだろう。
「ヤダヤダ。切っちゃダメ。これ私の生命線ゴウちゃんなんでも言うこと聞くから。ね?ね?」
「どんなんだよ。これが生命線って」
「お許しをーホントお願い」
ウルウルと俺を見てくる久梨亜。あっ。これガチだ。ガチで俺が怒ったと思ったのか。マジでウルウルしていた。
「はぁ……っか。顔洗ったか?」
「——まだ」
「……」
俺は怒りを封印のち。とりあえずハサミは危ないよな。ということで、ハサミは後ろで何か言っていたお方に渡した。その際に「ゴウくんは甘いわね。うふふっ」みたいなことを言われた気がするが。それに関しては触れず。俺はその後久梨亜の横に立って、洗面所のレバーを操作して水を出す。
「ゴウちゃん?」
その直後不思議そうに俺の方を見てきた久梨亜の顔に水をかけた。強制顔洗いである。制服はなるべく濡れないように行う。初めての事ではないのでね。まあまあ可能なことである。
バシャバシャバシャ。である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます