第10話 06時59分

「久梨亜。着替えたか?」

「着替えた!」


 良かった。次はちゃんと返事があった。返事の後俺がドアを開けると……ちゃんと制服姿の久梨亜が立っていた。まあまだ髪とかはボサボサだが……でも最悪このまま学校行ってもいいだろう。久梨亜が笑われるだけだし。俺には問題ない。


「ほら、着替えたなら次は顔洗ってくる。俺はリビング行くから早く来いよ」

「そんなに急がなくてもー」


 のんびりした声が聞こえてくる。って――なんか床にいろいろ落ちているが――まあこれもいつもの事。多分このことを言えば。である。今日は何か目立つものがあるのでね。


「あと脱いだものは床にほっておくな。洗面所にちゃんと持ってけ」


 俺は床に散らかっている物。布などをいつものようにチラッとだけ見て言った。


「ゴウちゃんが持って来てよ」

 

 だが。今日の久梨亜絶好調なのか。寝惚けているのか。そんな返しで来たため――。


「ほう。床にほってある下着を持っていくことになるが?寝坊助?いいんだな?丸まっている奴を」

「ぎゃあああああああ。これ違うー。間違ってさっき出したやつが落ちたのー。違うー。見ちゃダメ!」


 普段下着が落ちていることはない久梨亜だが、今日は何故かクローゼット前にポトリと落ちていたのが目に入ってしまってね。俺が言ったらさすがに恥ずかしかったのか。久梨亜が目にも止まらぬ速さで片付けていた。ちなみに――こんなだらだらの久梨亜だ。基本どこでもというか――いつでも?いつでもと言うと変かもしれないが。こいつと居れば下着くらい何度も何度も見ている。脱ぎたてとかでもよくあることで片付けることが出来る。だから特に俺は気にしてないが――何故かこうやって指摘すると急に恥ずかしがる久梨亜だった。うん。謎だ。さっきは着替えさせてとか言っていたのにな。


 まあその後バタバタしつつも久梨亜は洗面所へ向かったのだった。俺は久梨亜が洗面所に入ったのを確認してからリビングへと向かった。


「疲れた」


 俺がつぶやきながらリビングへと入ると――リビングはパンの良い香りと――美人ママさんが待機中だった。


「あらー、やっと終わったかしら?」

「終わりましたよ」

「朝から元気ね」

「うん?なんかおかしなこと考えてません?」

「一発やったんでよ?二発?」

「だから何もしてませんから!後朝からなんちゅー話を毎回するんですか」


 マジでここの美人ママさんも話さなければ完璧なのに――ちなみに先ほどちょっと触れたことをはっきり言っておこう。久梨亜母。久梨亜とは違い――胸デカい。くびれ完璧。おしりも――って、俺は朝から何を説明しているのか。でもまあそういうことだ。沓掛家に居るといろいろおかしなことになってくる。まあ――とりあえず久梨亜の母はちょっとでも町を歩けばスカウトされまくるお方である。中身はこんなのだが……。


「ふふふっ。まあまあ隠さなくても。あっ。パン焼けたわよ」

「……いろいろ言ってくるな。とりあえずいただきます」


 俺はいろいろ言いたかったが。時間も気になるため先に朝ご飯を食べだす。パンをかじる。うん、美味い。久梨亜のところのご飯は何でも上手いというか。食パンも高級なのかめっちゃ美味いんだよ。サクッふわっと言うのか。すごく食べやすいし。バターもメープルもめっちゃ合うんだよな。うんうん。美味い。


 俺がパンを食べていると。久梨亜の母はサラダも出してくれた。うん。マジ感謝である。感謝なのだが――出来れば静かに――などと思っていると。


「で、本当は朝からシタ?」

「だ・か・ら」

「ふふふー」

「……もういいや」

「あら。認めちゃう?」

「——」


静かに沓掛家で食事は難しいのだった。俺とりあえず口の中に物があるということで無言になることにしたのだった。

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