第8話 06時48分

 廊下に俺が出てから約5分後――なんか無駄に静かで室内が心配だったのだが――とりあえず着替え中に突入はさすがにできないため。俺はちゃんと5分待ってから久梨亜の部屋のドアをノックした。多少短かったかもしれないが。問題はない。どうせ久梨亜時間なんて気にしていないからな。


 コンコン。


「……」


 室内からは反応なしだった。

 まさかの前もあった、着替えている途中で寝た?ちなみに前回は半分脱いだところで座りながら寝ていた。過去の事だからバラしてもいいだろうということで、言っておくとパンツ一丁で上の服は肩まで――という感じで寝ていた。そのため――俺が起こしたら少しボケーとした後。久梨亜が現状を思い出したらしく。俺はめっちゃいろいろ物を投げつけられた過去がある。いやいや俺悪くないよ?だったが。まあそんなことがあったので――また騒ぐなよ?マジでである。朝から疲れたくないからな。などと思いながらノックをもう1度俺はしてから。


 コンコン。


「……」


 再度返事がないことを確認し。ドア開けた。すると室内では……ベッドに横になりスヤスヤと眠る眠り姫が――姿は先ほど5分前と同じハリネズミまつりのパジャマのまま。つまりこいつは――俺が出てすぐ寝たのだった。

 もう一度言う。着替えなど全く進んでおらず。そのままベッドに倒れただけだった。何たることかだよ。単に俺は約5分無駄にした!だった。


「起きろ!」

「——ほえ?」


 ちょっと声を出すと、さすがに次はすぐに起き上がる久梨亜って――こんなやり取りをしていたらマジで進まない。


「何故寝るんだよー」

「わっわっわっ、揺らさないでー」


 俺は久梨亜の元へと行き身体を前後に揺する。今俺達の姿をはじめて見た人は――俺が美少女をいじめている乱暴していると思うかもしれないが―—これは全て久梨亜が悪い。俺は頑張っているのである。とりあえず俺は久梨亜を前後に数回揺すりながら耳元で叫んでおいた。


「起きろ!わかったか!起きたな?」

「……お、起きましたー」


 すると耳を抑えながら久梨亜が答えた。


「良し。っかなんで寝たんだよ」

「うーん……ゴウちゃんが居なくなったから?」

「……」


 誰かメス持って来てくれ。こいつの頭の中開いて見てみたい。お前、さっき恥ずかしいからで追い出したよな?ちなみに俺は嫌というほどこいつのいろいろな姿を見ているので今更何も感じない。さすがに素っ裸は――はないが。でもそこそこの危ない姿は見ているので、着替えくらいのレベルである。ってか。俺が居ないとなるなら追い出すなである。恥ずかしいからで秒で着替えろである。


「意味わからんわ!久梨亜が着替えるからって俺は出て行ったんだよ」

「そうだった?」

「もう一度揺らそうか?」


 俺は久梨亜の両肩を持つ。


「ごめんなさーい。酔うからやめてー」

「——はぁ……見るなとか騒ぐくせに――進まん」

「大丈夫だよ。まだ07時前じゃん」


 部屋の時計を見ながら久梨亜がのんびり言う。いやいやこのスピードだとな。時間はあっという間なんだよ。


「今日こそ置いてくぞ?」

「それは嫌だ。嫌だー。絶対嫌!」

「子どもか!」

「子ども!」

「……あれ?このやり取り今日2回目な気がする――」

「うん。した」


 俺の問いに笑顔でこたえる幼馴染のガキ。今の久梨亜を見た人は天使。とか言うかもしれないが。俺には悪ガキの笑顔にしか見えていない。


「久梨亜……ふざけてるだろ」

「てへっ?」


 誰かこの幼馴染いりませんか?俺もういらないです。小学校のころから同じようなことを毎回思って。頭の中から誰かに助けを求めているのだが――ここ数年全く返事がないんだよな。うん。まあこんな奴誰もいらないか……いらないよな。こんな残念なやつ。

 わがまま娘というか。だらだら娘というか。ポンコツというか――見た目は完璧なんだから――まあいろいろ足りないと本人は言ってるが。でもそれでも普通に美少女で、こいつは小学校のころからずっと男子には人気がある。まあ人気があるのに――誰もこいつに告白したという話を聞かないのは……学校ではちゃんとしているが多分この家での行動が俺の知らないどこかで漏れているんだろうな。ホント残念なやつだ。


「——早く着替えろ。次はないからな?」

「じゃあ出てってよ。ゴウちゃんでも恥ずかしいよー」

「——このやり取りも2回した気がする――って、次寝てたら見捨てる」

「ちゃんと着替えるから。それとも――ゴウちゃんが責任とってくれるならー。脱がして?」

「——はい?」


 そう言いながら何故か万歳のポーズをする久梨亜。これは珍しいパターンというか――初めての行動だと思われる。ついに頭の中が壊れたのかもしれない。などと俺が思いながらちょっと考えていると。


「今思ったらー。昔一緒にお風呂入ってたから。そうっか、ゴウちゃんなら見られてもあまり問題ないかー。そのまま責任とってもらえばいいかー。って思いついてね。私すごいでしょ。これで毎日起こしてもらえる。さっき身体揺らされて賢くなったみたい」


 俺。とことん無駄な事ばかりしているのだろうか……身体を揺らしたらそんなことを考えるようになってしまうとは……ミスだ。


「……まだ寝ぼけていたか。っか変なことを思い出すな。着替えろマジで、朝は時間無いんだから。俺が早く来てなかったらとっくに遅刻だからな?」


 ちなみに、久梨亜の言っていたお風呂云々は……まあ事実だな。小学生のころから俺の親父は既にぶっ飛んでいて――久梨亜。沓掛家によく居た俺――風呂入ってたわ。なるべく思い出さないようにしていたが――いや、何度も言っているが。こいつ見た目は可愛んだよ。だから――まあな。うん。という事である。でも他が残念過ぎるんだよ。それに過去の事。気にすることではない。さすがに今の姿で――だが。ってなんでこんな変な事ばかり今日は朝から考えさせられるんだよ。


「あっ。ゴウちゃん。制服だけ出してー」

「自分で出せよ」

「ゴウちゃんに見られる。ギリギリのラインで脱ぐから」

「やめろ。ふざけるな」


 とりあえず、俺はそう言いながらも少しでも早く久梨亜が着替えるように、クローゼット開ける。ちなみにクローゼットを開けるのは、よくよくしているのでこの行動も全く問題ない行動だ。ってか。相も変わらず――こいつは服をたくさん持っている……制服どこだよ。準備しとけよ。わからないじゃないか。なんか着ぐるみみたいなのもあるし。ってあったあった。俺はクローゼットの中を探して――何とか久梨亜の制服を発見。すぐにベットに置いた。


「ほら着替えろ」

「着替えろって――ゴウちゃん居たら着替えれないじゃん。恥ずかしいー」


 わざとらしく久梨亜が俺を見ながら言う。


「言っていることがめちゃくちゃだぞ……既にこのやり取り今日3回目だし」

「——本当に見てるの?それはそれで――いいけど。」

「出て行くわー」


俺はそう言うと久梨亜の部屋から2度目の退室をしたのだった。

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