第9話 獣族軍の攻撃
獣族軍を指揮していたリリウス・フォリスは直ぐに指示を出す。
「将軍アテナ・ウルクは撃ち取ったッ!これより一斉攻撃を開始する。巨鳩空戦団出撃!」
リリウスの命を受け、各隊の隊長が檄(げき)を飛ばす。
「家族のッ、友のッ、仇だッッ!!人族軍を討つッ!行くぞぉーッ!」
「「「おぉおおおおおおおおおおおおッッ!!」」」
最後方に陣を張っていた風族の巨鳩空戦団体が次々に離陸し戦場の上空へ向かう。
空を埋め尽くす巨鳩空戦団を一瞥したリリウスは次の指示をだす。
「コーリ族弓矢隊!一斉射撃!」
「私達の矢で全員仕留めるよ!放てッ!」
「「「おぉおおおおおおおおおおおおッッ!!」」」
矢の射程は通常150メートル前後だが、空にいる巨鳩空戦団の風魔法で矢を1キロメートル先の人族軍まで届かせることができる。
次々に放たれる数万の矢は風魔法で空高く上昇し、人族軍の頭上に雨の様に降り注ぐ。
更にリリウスは叫ぶ。
「カロヴァ族先兵隊、突撃ィ!」
「人族を絶対に赦すな!叩き潰すぞッ!」
「「「もぉおおおおおおおおおおおおッッ!!」」」
ガルレオン族よりも一回り大柄な牛のカロヴァ族。ホルスタイン柄の髪と二本の角を頭に生やしている。
平時はおおらかな彼らだが、いざ戦場に立つと内に秘めた獰猛さが顔を出す。
降り注ぐ無数の矢、目前には超巨漢で超重量級のカロヴァ族の軍団が突進してきている。
「ひっひぃぃぃぃ!」
「たっ、たすけてくれーッ!」
人族兵は戦意を失い悲鳴を上げた。
そんな最中、エリシアは蒼龍が作ったクレーターの縁に立ち、その中心を見つめていた。蒼龍に食われるときにアテナが見せた余裕が気になったからだ。
クレーターの中心に転がっていた岩が急に吹き飛び、アテナが出てきた。
アテナは軍服が破れているものの身体は無傷で相変わらずの無表情だった。
「くっ、傷一つ付けられないなんて……」
エリシアは呟く。
「なかなか派手な魔法ではあったが、少々殺傷力に欠けるな?レベル5ではこの程度か」
「…………」
「ふむ、もう始まってしまったか。少し削ってやろうと思っていたのだがな……。まぁ、奴等に任せておけばよいか」
「アテナ・ウルク、貴女は人族ではありせんね?強靭な強さを誇る者は戦闘の際に魔力で肉体を強化しています。それは人族も例外ではありません。だが、貴女にはその魔力光が全く見えない」
「ほう、魔力を視認するか」
「ええ、魔力強化無しに蒼風翼のスピードを越えるなどあり得ません。通常であれば体がバラバラになります。貴女は何者ですか?」
エリシアは戦闘の際に常に肉体を魔力で強化している。
獣族とは違いこれまで風族は肉体を魔力強化ができなかった。しかし、エリシアはガルレオンの村で魔力その物を研究し鍛練して成果を出した。そして己れの中の魔力と向き合うことでレベル5蒼風を取得できた。
一連の会話でアテナは表情を全く崩さない。
「まぁよいか。……私は機械人形(オートマター)だ」
「オートマター?聞いたことがありませんね。その異常な肉体、……龍人族と関係はありますか?」
「ふむ、あんなヤツらと一緒にされるのは心外だが、……お前に説明しても分からんだろう」
「どういうことですか?」
「言葉通りの意味だ。さてどうするか。おそらくお前が風族の中で一番魔法に長けているのだろう?お前、精霊とは対話できないのか?」
「何のことでしょうか?」
「レベル6以上は精霊と対話ができないと話しにならないと言うことだ。どうやらお前達は多くの知識を失っているようだな」
「…………」
「まぁよい。まだ時間はある。どれ、もう少し相手になっ――。
エリシアよ、直ぐにこの戦場から離脱しろ。ヤツめ余計なことをしおって」
これまで殆ど無表情だったアテナは、少しだけ嫌悪感を滲ませた。
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