第27話 ウィナーズ決勝戦前に


 あれから僕は順調に勝ち上がっていった。

 twitterで確かに僕の対戦動画は流れていたが、対策出来ている対戦相手はいなかった。

 その為、あれよあれよとウィナーズ決勝戦まで進む事が出来た。

 この決勝に勝てば二位は確定、負けたらルーザーズ決勝で敗者復活を掛けた勝負をしなくてはならない。

 可能であればこの決勝は勝ちたい。

 勝てば試合数を一つ減らせて、二位は確定できるんだ。

 とても大事な試合だ。


 うちの家族もグループLineで応援してくれている。

 クラスメイトも見てくれて盛り上がっている。

 そして、奏も見守ってくれている。


「――うん、僕は勝てる」


 確実に手応えを感じている。

 右手の調子も良くて不安要素がない。

 緊張は全くない訳じゃないけど、程よい感じでむしろ心地よい。


「この緊張感、三年前の決勝と同じ位だな」


 三年前の事を思い出して、ふと思ったんだ。

 ああ、僕はやっと、このゲームの世界に帰ってこれたんだって。


 全てを諦め、いつでも死ぬ事しか考えていなかった僕が、奏と出会って一気に世界が変わった。

 まるでとんでもなく速いジェットコースターに乗っている気分だ。

 沢山の人の期待も背負っている。

 その期待がプレッシャーに感じるけど、僕の原動力にもなっている。

 今の僕は、誰にも負けない位に輝けていると確信している。


 すると、Lineにメッセージが入ってきた。

 大会の運営からだ。


『ウィナーズ決勝戦が間もなく開始します。対戦部屋を作ったので入室をお願いします。パスワードは〇〇〇です』


 ……ついに来た。

 僕はそのメッセージに「わかりました」と返信し、指定された対戦部屋に入室した。

 対戦相手は投げキャラである《ザンギジー》使いの"おっちゃま"選手だったな。

 こちらの飛び道具を防ぐ技を二つも持っているから、非常に面倒な対戦相手だ。

 面倒である事は間違いないのだけど、今の僕なら絶対に勝てるだろう。


 全身がぶるりと震える。

 きっと武者震いだ。

 だって、心から楽しいと感じているから。

 

 気合を入れた直後、スマホが震えた。

 開いてみると奏からメッセージが入っていた。


『大丈夫、千明君なら絶対に勝てる!』


 ああ、君のメッセージは何でこんなにも心に入り込んでくるんだろうか。

 今の僕は、君のおかげで無敵になれたよ。


「よし、行くぞ!!」


 そして、ウィナーズ決勝戦が始まった。

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