暖を取りたい博士と助手の話
「うぅー、まったく今日もすごく寒いな~。」
僕と博士しかいない研究室では、今日も博士のそんな声が響く。
「ホントですね。最近、急に寒くなってきました。」
「この間は夏かと思うほど暑かったというのに、まったく秋は何処に行ってしまったのだろうか。」
「確かに、そろそろストーブとかも出さないと。」
「コタツも頼むよ。」
「でも、コタツを出したら博士、全くコタツから出てこなくなってしまうじゃないですか。」
「そりゃそうだろ。あんな至高の物があるというのに出ないバカがいるものか。」
「そういうバカがいるので、コタツはもっと寒くなってから出すことにします。」
「なっ!?ぐぬぬ、君と言う奴は……」
そんなやり取りをしながら、実験器具を片付けていると博士がいきなりぴとっと僕にくっついてくる。」
「……何をしているんですか、博士?」
「うん?いや、なに、こういう寒い日は一緒に暖を取ろうかと思ってな。」
「……だからと言って、くっつく必要はないと思うんですけど。」
「まあまあ、そう言わずに……、おやっ、助手君の早い鼓動を感じるぞ。ふふふ、まさかドキドキしているのかい?」
「そんな訳ないじゃないですか。僕の鼓動は正常ですよ。ほらっ。」
そう言って、僕は博士の手を自分の胸に当てる。
「ねっ?」
「うん、ホントだ。あれ?じゃあ、さっきのドキドキしていた鼓動は誰の……」
「……それってまさか、博士の音じゃ……?」
「……へっ?」
「だって、そうじゃないですか。ここには僕と博士の二人しかいなくて、僕の鼓動が正常なら、残りは……。」
「……」
「なんだ、博士。僕とくっつけてドキドキしていたんですね。まったく可愛いな、うちの博士は。」
「ぐぬぬ、言うな言うな!止めろ!」
博士は真っ赤にさせた顔で「うぬぬ」と唸る。
「もういい!実験の続きをするぞ、助手君!」
「はいはい、分かりましたよ。」
「はいは1回だ!」
「はーい」
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