足が重い博士と助手の話
「うーん……、助手君~。なんか足が重いよ~。」
僕と博士しかいない研究室では、今日も博士の情けない声が響く。
「えー、いきなりどうしたんですか?」
「いや、なんか、朝起きてからすごく足が重いんだよね。」
「それは疲労とかが溜まっている感じですか?」
「うーん、そうみたい。」
「なるほど……、それは大変ですね。」
「だから、動いたりするのが少しだるいんだよね。すごく疲れるし。」
「ふむ、……それなら今日の実験はやめておきますか。」
「いいのかい……?」
「えぇ、博士がその様子なら僕も満足に実験できないですし。それにこういう時は休んだ方が良いでしょう。」
「そ、そうか。君がそう言う事を言うのは珍しいな。」
「まったく、僕のことをなんだと思っているんですか。確かに実験も大切ですが、それ以前に博士の体の方が大切ですから。」
「助手君……」
「まぁ、そんな訳ですから、今日は自分の部屋へ戻って、ゆっくり休んでください。」
「うむ、そうしよう……。」
そうして、博士は自分の部屋へと向かおうとする。
だが、その前にあることに気づいたようで、ハッとした顔をする。
「ちょっと待てよ。今、君は私に自分の部屋へと戻れと言ったのか?」
「?、ええ、言いましたよ。それが何か?」
「この足が重くて動けない私に自分の部屋へと戻れと言ったのか?」
……あ、何となく察して来たぞ。
「……つまり?」
********
「……まさか『重いのは足じゃなくて博士だ』なんて言わないだろうね?」
「いえいえ、博士はお軽うございますよ。」
……結局こうなった。
僕は博士のことをお姫様抱っこして、博士の部屋へと向かっている。
「はぁ、なんで僕がお姫様抱っこしてるんだか。」
「なんでって、君の愛しい博士が足が重くて、動けないに決まっているだろう。」
「別に愛しでもないですし、それに博士、一回自分で向かう素振りを見せたじゃないですか。」
「うっ……、ま、まぁ、いいじゃないか。どうせ君は暇だろう?だから少しは私を助けてくれたっていいじゃないか。」
「いつも助けていますし、尻拭いもしていると思うのですが、まぁ、良いです。ちゃんと部屋に戻ったら休んでくださいよ。」
「分かってるよ。君にここまでさせたのだから、ちゃんと休むよ。」
「ふぅ……、それならいいんですが。」
そんな些細なことを言いながら、僕は博士を部屋へと送り届けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます