第20話 チートだけどチートじゃなかった……



 うーむ……ロバートさんが考え込んでしばらく経つが、そろそろなにか喋ってくれないと落ち着かないなぁ……。モサモサ……


 なにか問題のあるスキル……そういやがっつり犯罪チックなのあるけど、他のスキルで使えるものがあるのか教えてくれないかなぁ。


 まだ考え込んでるなら新しく生えたスキルの詳細見てもいいかな? なんなのこの草って? なんかまたロクでもないスキル臭いんだよなぁ。モサモサ……


 まぁ問題あれば閉じればいいだけか。ポチっと。



・草

 草生えるわw



「おやおやぁ? 単芝なのは自分がボッチな嫌われ疫病神としての自覚の現れかい、駄女神さんよぉ?」



・草

 草生えるわwwwwwwwwwwww



「増やしたところでお前がボッチなのは変わらないのに……まぁ、ご苦労さん」



・草

 ___ (´・ω・`)ショボーン



「草を抜いてはいけない。せめて草を生やせ」



・草

 ___ (`・д・´)ヤダ



「なに嫌がってんだよ、拗ねんなよめんどくさい」



・草w

 ___ ヽ(・ω・。ヽ)



「違う、そうじゃない。草に草生やすな」



・草

 ___



「草から逃げるな」


 ……むっ、更新されなくなったか。てか終始まともな説明がなかったぞ?


 つーかわざわざ大声出さなくても聞こえてたのか、まぁデカい声の方が嫌がらせとしては有効だろう。今後もやっていこう。モサモサ……


「き、君は……やはりあれと繋がっているのかい?」


 あっ、ヤッベェ。まーた人前だって忘れてたわ。


 てかさすがにあれだけやり取りしてたら思考を放棄して戻ってくるか。


「う~ん……繋がっている、というより一方的に俺の声が届くスキルがある。とでも言えばいいんですかね? それっぽいスキルがあるんで暇潰しにおちょくってただけですよ。

 あと俺は駄女神廃絶処刑執行者筆頭過激派活動家だと自負していますので、もしあれを殺るときにはご一報を。必ず力になって見せますので」


「そっ、そうなのかい……? というかよく一息に言えたね、それ。それじゃあ、そのときはよろしくね……」


 あれ……なんか引かれた? まぁ俺がアンチ駄女神派と理解してもらえた事だろう。


 ついでに駄目押しに蔡主スキルの詳細を見せておく。


「これがそのスキルかい? これはまたなんとも……ひょっとしてこれのお陰でゼムス様とやり取りができたのかい?」


 うん? もしかしなくても未知のスキルだったりする?


「たぶんそうだと思いますよ。そこに書いてあるのは駄女神……じゃなくてイーリスに祈りを捧げろ。なんてふざけた内容ですが、実際は神であれば言葉が届くスキルじゃないかと」


「なるほどね、それであの数値にまで成長したのか。

 それはまた神官たちが煩くなりそうなスキルだね。でもこれは公開しないほうが良さそうかなぁ……

 なにせこのスキルであの邪悪に声が届くということは、神だと認めるようなものだからね。異端審問にかけられたくなかったら秘密にしておくべきだね」


 あぁ、やっぱりお初スキルでしたか。それもいきなりアウトなスキルですか?


 それにしてもこの世界の神を否定してるのに神官て、いったい何を信仰してるんだ? まぁそれは今はいいか。


 とにかくアドバイスを! ロっちゃん、イサムを定職に就けてってっ!!


「あの、なにか詳細を確認したいスキルってありますか? まぁ、説明の体を成してないスキルばかりなんですが……」


 俺自身でも無価値判定していても、なにか価値を見出だしてくれると信じてるよっ!


「それじゃあ、全部見せてくれるかい?」


「ええ、いいです……え? 全部ですか?」


「あぁ、解体はいいかな。それ以外頼むよ」


 あれぇ~……なんかおかしくなぁい? 求められるとしても魔法以外くらいだと思ってたんだけどなぁ。なんか不安になってきたんだけど……草食おう。モサモサ……


 それからロバートさんに詳細を見せては考え込みを繰り返して、ほぼ全てを見せていったのだが──


「それにしても……うーん、困ったな……」


 オイラの全部を開けっ広げに見ておいてこの言い様である。酷いっ酷いわっ!!


「こ、困ったって、何がですか……?」


 ここで困られたら本当に困るのは俺ですよっ!? 諦めたらそこでスラム追放ですよっ! 俺がっ!!


 見捨てないでっ! 哀れな根無し草を見捨てないでぇっ!!


「いやね、君のスキルはレベルこそまだ低いものの、とても有用なものが多いんだけどね……」


 ……ふへぇ? 有用なら別にいいじゃん、なんで困るのさ?


「ただこのスキルを世間に公表、或いは露見した場合、君は実験動物のように自由の無い生活を送るか、嫉妬や利用しようとする者たちに絡まれ続ける生活になると思うよ?」


 ふぁ~……? ふぁああああああああっ??!!


「ちょっ!? それどういうことっ!!」


 仕事もねぇ! 自由もねぇ! お腹は草で満たしてるっ! オラそんな生活イヤだあああああっ!!


「あぁ、やっぱりこれも気付いてないか。

 ……いいかい、イサムくんが修得しているスキルだけどね、そのほとんどが人類が修得したことの無いものなんだよ。

 なかでも人類が憧れ欲したスキル──魔法を使えることが話をややこしくしているんだよね」


 魔法が……? いや、ここ剣と魔法のファンタジーでしょ?


 …………えっ、もしかして普通使えないの?


「まっ、魔法が使える世界だって聞いてたのに……」


「誰に聞いたのかは知らないけれど。人類で魔法が使えるようになった人は未だに発見されていないよ、君以外は。

 いいかい、魔法は魔物たちしか使うことのできない力だと言うのが現在の通説なんだ。だがそれをひっくり返す存在が君なんだ」


 あっ、これあかんヤツや。


 どうあがいても面倒事にしか道が続いてないヤツだ。


「魔法の現象に定型は存在せず、変幻自在にして威力も自由自在。個体や種族で強い弱いはあれど、魔物のなかにはそのような力で襲いかかってくるモノもいるんだ。

 一方人類はそんな魔法に対抗して魔術を生み出した。だが定型で威力も一定でしか行使できない、魔法の劣化模倣にすぎないモノだがね。

 まぁ熟練の魔術師なら魔力操作スキルを覚えて多少は自由になるけど、魔法にはどうあっても及ばないんだよ」


 うん、ちょーーっと待ってね?


 話を続けようとするロバートさんを手で遮り、背を向け大きく吸ってせーのっ!!


「魔物専用スキルまで表示してんじゃねぇよバカ駄女神がああああっ!!! なーにが転移したら魔法が使えるじゃドアホぉっ!! おまけに魔力操作スキル魔術用じゃねえかよおっ!! 自分の世界の事なら知っとけやボケぇええええぇええっっ!!!!」


 なんかおかしいとは思ってたけどそういうことかっ!


 魔法が強力過ぎると思ったら魔物専用とかどういうことっ!?


 地球の神ゼムス様っ!! ヤツにっ! あの考えなしにっ! 俺の届かぬ怒りの拳に代わってドカンと一撃お願いしますっ!!


──ピロンッ♪


[一撃だけでいいとか甘やかしちゃ駄目だよ? それとそっちの世界へは直接干渉できないから、その程度のことならもっと頼っていいんだよ。]


 …………あいつマジで何やらかしてこんだけ怒らせたんだ? 絶対滞納やら違法視聴程度だけじゃねえだろ?


 うむ、俺以上にお怒りの方がいるとなんだか冷静になるもんだな。


 それにしても、もはや頼みの綱だったまともなスキルが表に出せないものだとは……どうしたものか?


 あと使えそうなのなんて、泥棒でもして生きるくらい……そういや草生えたんだっけ。


 でも草生えたくらいで……あっ、森の前で食べた腹がピクピク痙攣する草生えたわ。


 石床突き破るとは根性あるねこいつ、いただきます。モサモサ……


 モサ……ん? なんか前食べたのより食感も味も悪いような……? 草スキルのレベルが低いせ……うっくおぉっ、これだけ整腸のレベルが上がってもまだ微かに痙攣するのか……。


 この草、意外とやるね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る