第17話 発見! まともそうな人!!



 うむ、草の炙りはアリだな! ただちと臭いのが難点だな。


 それにしてもこの姉ちゃん突然座り込んでどうしたよ、この床ばっちぃよ? 具合悪いなら俺の草分けたげるからそっちに座りなよ。


 ……もしや、具合悪くなったのこの草炙った煙を吸ったせいか?


 えっ、俺あの草原に入ってからずっとこの草モサってるんだけど、これヤバい草……?


 うーん、まぁ今さらか。頑張れ整腸くん。モサモサ……


 にしてもどうしたもんか、なんか怒鳴ったかと思えば座り込んで黙りだもんなー。


 ここは頼れる草として、こちらから会話を振ってリードすべきか……?


「そろそろいいかい、エミリアくん?」


 ん、誰だこのおっさん? というかまだ他に人が来てたのか。エミリアってのはこの薄緑髪の姉ちゃんの名前かな?


「え……? あっ、だっダメですロバートさんっ! この男は危険で──」


「いやいや、大丈夫でしょ。二人の会話は聞こえてたけど別に敵対的でもなさそうだし」


 このくすんだ金髪のおっさんがロバートって言うのか……てかエミリアさん……いや、この娘はちゃんでいいか。が、俺のこと危険視してたの?


 君の同族の草なのに酷い……そりゃ同族を食ってるけど俺、悪い草じゃないよ。モサモサ……


「でっ、ですが……」


「まぁまぁ、それじゃ話が進まないし。仮に彼が抵抗する気ならとっくに始末されてるはずだろう?

 それにどうやら彼はこの状況がよくわかっていない様子だし、さっさと本題を片付けてしまおうよ?」


 まぁそれは追々わかってもらえばいいか、このロバートって人は話が通じそうだし。なによりここに入れられた理由を教えてくれそうだ。


「それじゃあ改めて。私はロバートだ、よろしくイサムくん。それと、そこで腰を抜かしてる子がエミリアくんね。

 彼女はこう見えて若手の騎士の中でも有望株……なんだけど、まぁ見なかったことにしてあげてね」


「ちょっ!? ろ、ロバートさんっ!」


 へぇ~やっぱこの世界にも騎士とかいるんだねぇ。うむ、照れてる顔は良いねぇ、受粉させちゃうぞ?


 てか草の煙のせいじゃなくて腰抜けてたのか……なんで? あ、そういや何かスキルは使えないとか言ってたのに使えたからかな?


 それじゃ俺が脅かしたせいで腰が抜けたってことかな? それは草紳士として申し訳ないことをしてしまったようだな。


 ならこの事は忘れてしまおう、俺は草食ってるだけでなにも見てない。モサモサ……


「あぁそうそう、それで私は普段は冒険者ギルドで持ち込まれた物を鑑定するのをやってるんだけどね、たまに人物鑑定を頼まれてバイトしているだけの一般人ね」


 ほぉ~、これまた定番の冒険者ギルドとな? そこなら俺でも登録?して身分証が手に入れられるかな?


 このロバートさんがギルド職員なのか外部の人かはわからんけどコネ入りとかさせてくれないかな……よっしゃ媚び売っていこうっ!


「筆頭鑑定士のロバートさんが一般人な訳ないでしょう……」


「あくまでこの街のね。世の中には私より実力のある鑑定士なんて掃いて捨てるほどいるさ」


 おぉ、なんか謙虚な人格者っぽいな。これは人望にも期待できそうだ! なんとしても気に入られて、そしてコネ入りさせてもらうぞっ! モッサモッサ……


「それで私がここに来た理由だけど。まぁお察しの通り鑑定するため……なんだけど、それは話の通じない相手への最終手段なんだよね。

 できれば自分で能力を開示してくれた方が君への印象は良くなるよ?」


 ほうほう、まぁ協力的な方が印象が良いのは当たり前か。しかしステータスの開示とな?


「えっと、どうやって開示すればいいんです?」


「ん、知らないのかい? ステータス……のあとにオープンと言えば誰でも見られる状態になるよ。

 本当はよほど信用できる人でも無い限り見せない方が良いのだけどね。申し訳ないが君への疑いを晴らすには正式に鑑定されるか、自分で開示するしかないんだよ」


 途中でステータスと言ったせいでウィンドウが開いたのだろうか、腕を振ってウィンドウを掻き消していたようだ。


 やはりこの仕様は駄女神の設計ミスだろうな、どうあっても呟けば表示するというのは。


 それにしてもいったい何を疑っているのだろうか? 昨日の門番の兄ちゃんが言ってたなんかの手先がどうのとか言うのか?


「う~ん……開示するのは構わないんですけど、俺は何を疑われているんですか?」


 ん……えっ? 俺なんか変なこと言った? なんかエミリアちゃん驚いた顔してんだけど……知らないと不味いことなの? なんか怖いし草食べよ。モサモサ……


「あぁ、本当になにもわかってなかったんだね。君への疑いはね、邪悪な存在の手先ではないかというものだよ」


 は? じゃあくな、そんざい……?


 そんなのの手先になった覚えはないし、第一なんでそれがステータスを見れば判別できるんだ?


 考えられるのはスキルだが、どれだ? 疑わしいのは……ヤベェ、鍵術や襲術はともかく、盗術は言い逃れできる気がしねぇ……。モサモサ……


 でも盗術程度でここまで危険視されるものか……? うーん、わからん! もういいや出たとこ勝負じゃ!


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