第10話 ピョンピョンするよ!



「俺が……俺こそがマ○オだ……っ!」


 草を口から吐き散らかしながらいきなり何を言っているのかって?


 言っておくが別に姫も助けてないし助ける気もないし、亀もキノコも苛めてもいない。苛めるにしても自身の亀くらいである。


 なら何かって? 決まってるだろ、ピョンピョンダッシュだよ。


 この跳躍のスキルな……わかりやすく効果出てんのよ、もうすげぇジャンプ力よ?


 最初のピョンピョンダッシュは腰よりちょっと低いくらいのジャンプ力だったんだけど(それでも走りながらの跳躍力としてはスゴいけど)、休憩を挟みつつピョンピョンダッシュを続けた結果、初日から自身の身長を越すジャンプ力を手に入れたのだ!


 スキルの力ってすげぇのな! もう俺を称えるかのように飛び上がる度にあれが聞こえるのよ。


──プオーン


 そう、プオーンだ。


 これはもう職業が敗北者から配管工になっていることだろうよ!


「ステータス!」



【イサム・ノウミ】


Lv.8

職業 変質者


H……



 ……うん。変わってない、決して変わってなかった!


 はぁ~ぁ……結局敗北者かぁ~! なんだよプオーン詐欺しやがって、これ誰訴えればいいのっ?! そうだアイツだっ!


「おいこら駄女神っ! プオーン詐欺してんじゃねぇよっ!! 雷落とされてアフロになって詫びやがれド畜生っ!!

 地球の神よっ! この世界の神は触れてはいけない禁忌に手を出しましたっ!! この違法利用者に然るべき対応をっ!! 裁きをお与え下さいっ!!!」


 ふぅ……通報完了。


 持ってて良かった蔡主スキル。まぁ届いてるか知らんけど。


「さて、良い事したあとは……」


 今日の寝床確保だよねっ!



 時刻は夕暮れ、もう間もなく宵闇に辺りは包まれる頃となった今の現在地は……未だ草原のただ中である。


 なぜ当初の建造物はおろか、平原にすら辿り着けていないのか? その理由は服である。


 というのも転移時に着ていた服は兎によって致命的にボロボロにされてしまっていたが、ギリギリ身に纏っていられる状態ではあったのだ。


 だがしかし、事もあろうにこのアホは思いの外の跳躍力に浮かれに浮かれたピョンピョン中にあちこち引っ掻け、衣服のほぼ全てをただのボロ布に変えてしまったのだ。


 ちなみに残っているのは砂まみれの靴下と靴である。


 つまり、イサムはその身を解放感に包まれたのだ。もはや自然に還っているといっても過言ではないのである。


 だがしかし、さすがのアホでも魔界の村すら出入りお断りな状態は堪えたらしく、人の尊厳を取り戻そうと必死に足掻いたのだ。


 そうそれは──うん、草だね。


 ここの草原の細長い草を纏め、その草束を括りつけ、身を隠すように上下に全身草でコーディネートされた姿の変質者──それこそがイサムである。


 職業、変質者は成るべくして成ったのである。


 ちなみに当人は非常食確保と宣っており、存外気に入っていたりする。


 またこれは余談であるが、本人は気づいていないがジャンプする度に棒や玉がフワリとチラ見えしている。


 もし辺りに人が居るのであれば腰ミノ状態ではなく、しっかり鼠径部が見えないよう括りつけてほしいものである。


 それと糾弾したプオーンについてだが、括りつけた草の中に勢い良く振るとそのような音が鳴る草が混じっているから聞こえているだけで、駄女神は特に悪さをしたわけではなかった……が、それはどうでも良いか。


 話を戻して、全身を草まみれにするのに時間がかかったこと、食料確保の観点から、草原を出ずに建造物へと近づくことにしたのである。


 普通であれば背の高い草の草原などという、何が潜んでいるかもわからない見通しの悪いところに留まり続けるなど正気の沙汰ではないがご安心下さい、コイツはアホです。


 とにかく本日は時間切れである。



「よし、ここにするか。兎と戯れたあとは魔法を使ってないしいけるだろ?」


 まずは邪魔な草を土を動かして中央にまとめてペイ……っと、そんで軽く盛り土をぉおっと! ちょっと盛り過ぎたか? まっいいや。


 そんでさっき抜いた草……は、ちょっと少ないか? 盛り土の周囲の草もペイっとな。


 よしよし、追加の草も中央に引き込んでその場で3メートル四方を石壁で囲んで……っと、うん想像通り空気穴になるなる凹みも上部に作れてるな。


 あとは天井……うん、10分とかからず出入り口無しの豆腐ハウス完成!


 …………いや本当にこんなスキルがあっていいの? 使えば使うほど怖くなるんだけどこれ?


 しかも魔力操作なる強化スキルもあるとか……現状でも自由自在なのに更に自由になるの? これでもまだ足りないの?


 異世界よく破滅せずに残ってるな。


 まぁ俺が気にしてもどうしようもないか、とっとと飯食おうっとモッサモッサ……


 にしてもこの後どうしよう? さすがにまだ夕方くらいだし、寝るにはまだ早いがやることもないんだよなぁ……モッサモッサ。


 なにかスキルでも鍛えるか? でも跳躍を鍛えるにはこの豆腐ちょっと小さく作っちゃったし、草でもモサりつつ駄女神でも罵倒するか?


 あっ! そういやじゃない方スキル掴まされたけど、同音のスキルも存在するんだしそれの取得を目指すのも良いのか。


 まぁここで鍛練できるスキルなんて瞑想くらい……だな、とりあえず瞑想を試して、MPが回復したら魔法の鍛練って感じで繰り返していくか。


 そんじゃ早速配置をば……よしここなら取りやすいな、いざ瞑想開始!


 …………モサモサ…………モサモサ…………モサモサ…………モサモサ……モサ……モサ……モサ……モサ……モサ……モサ……モサ……モサ……


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