一七一話
「――――っ!?」
『ワープ』の魔法を使って、2年1組の教室へ飛んだ直後だった。最早、その場に立っていられないほどの強烈な振動が俺を襲ってきた。
周囲から複数の悲鳴が上がるのも相俟って、なんとも心臓に悪かったが激しい揺れはただちに収まった。確か以前にもこういうことがあったと思うが、今回は次元が違う。一体何事なんだ……?
『ふわぁ……え、えっと、学校の皆さま、とんでもないことが起きてしまいました……』
そこで、タイミングよく天の声が降り注いでくる。とんでもないことだって?
『ちょ、ちょ、ちょ――』
ちょ……?
『ちょ、ちょう……超大型モンスターが、こちらへ向かってきます……』
え……? 今なんて言った? 超大型モンスターだって……? 俺は一瞬自分の耳を疑ったが、実際にそう発言したよな。どういうことなんだ。確か、以前ヒナは小さな飛行型モンスターがやってくるとか言ってたような……。
『それも、すぐ近くまで迫ってます……。例の小鳥さんのようなモンスターが消えていることから、いつの間にか今の姿に変化したようなのです。私自身、ちょっと前に同居している方に起こされて目覚めたばかりなこともあって気付きませんでした。本当に申し訳ありません……』
「…………」
なるほど、そういうことだったのか。やはり、今回のモンスターは鳥のように見せかけて俺たちを油断させてたわけだ。てか、それを知らないってことは、ヒナはあの件があってからずっと眠ってたんだろうか?
『超大型モンスターは一歩の幅が大きいので、このままではあと1時間もしないうちにこの学校は跡形もなく潰されてしまうでしょう。なのでどうか、救世主の仮面の英雄さま、学校を救ってください――ふわぁ……あ、失礼いたしましたっ』
教室にいる連中からひしひしと伝わってくる切迫感に比べると、ヒナの声には欠伸も相俟ってあまりにも緊張感がなかった。彼女にしてみたら、ゴキブリに比べたらどんなモンスターでも可愛いものなのかもしれないな。そこはやはり神級モンスターらしいといえばらしいんだが。
ん、またあの折り紙が俺の足元に落ちてきた。
ヒナからの俺個人あての手紙なのはわかるものの、なんて書いてあるんだろうと思うと恐ろしくなってくる。正直、これを広げるのにはかなりの勇気が必要だったが、いずれは見なきゃいけないんだしってことで思い切って中を確認する。
何々――『この間は、無理矢理行為に及んじゃったみたいで、ごめんなさい。どうしても気持ちを抑え切れなくて……でも、アクシデントはあったものの、無事に添い遂げることができたみたいでよかったです♥ ただ……ユートさんのアタックが優しすぎたのか、私は行為中もぐっすり寝てたみたいで、それが唯一の心残りではありますけど……またいつかお願いしますねっ♪』
「……ごくりっ……」
読み終わると同時に、俺は思わず息を呑んだ。やっぱりあのあと、ヒナは王に起こされたのか一度目覚めていて、そのときに事情を説明されたんだろうな。んでそれからまた眠って今に至ると。
でも、もし何もやってないことがバレてしまったらどんなことになるのかと思うと末恐ろしくなるが、それを考えると心臓に悪いのでなるべく触れないようにしたい。
さて……気を取り直して例の超大型モンスターとやらを退治しにいくとするか。どれだけ今回の相手が強かろうが、ジルやヒナのようなゴッドクラスのモンスターに比べたらずっとマシだろうから……。
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