一六一話
「「「「「――な、なんだって……!?」」」」」
俺たちが揃って同じ台詞を吐いてしまうのは、それだけ衝撃的な話を受付嬢から聞かされたからだ。
彼女の説明によると、冒険者ギルドは最早機能しておらず、今日か明日にも閉鎖するかもしれないのだという。
こうなったのも商人ギルドによる冒険者に対する嫌がらせが影響しているんだとか。しかし、それだと腑に落ちない点もある。冒険者を追い詰めるのは自殺行為に思えるのだ。神級モンスターが普通にその辺にいるような世界だから尚更。
「じゃあ、商人たちは自ら外に出て売り物を仕入れてるってこと? いくらなんでも危険すぎるんじゃ……?」
「いや、それがさ、商人たちは金のかかる冒険者じゃなく、安い奴隷をこき使って目的のものをかき集めてるって噂さ」
「ど、奴隷だと……?」
その言葉が出て、ファグの顔色が変わった。そういや、あのときも商人たちがファグの仲間を介して、故郷の村人を奴隷として買おうとしてたんだよな……。
「そりゃ、冒険者ギルドにだってろくでもないやつらはゴロゴロいるけどさ、商人ギルドの連中のやり方はそれ以上に酷いもんなんだよ。奴隷たちに粗末な住居と飯を与える代わりに石板を貸して安いスキルを買わせて、危険な外へ行かせてるらしいよ。そのほうが命を失わずに集められるし、死んだらほかの奴隷を使えばいいってわけさ」
「「「「「……」」」」」
あまりの悪辣さに、俺たちは無言で呆れ顔を見合わせることになった。
「んで、頼みの冒険者たちも商人ギルドの報復を恐れて依頼を受けようとせず、この有様だよ。だからさ、あたしはもうこうなったらギルドを閉めるしかないってギルドマスターに申し出たんだよ。そしたら、冒険者ギルドに愛着があるから絶対やめたくないけど、商人ギルドが怖いから本格的に活動したくないって言われてこんな具合さ」
「……つまり、前にも後ろにも進めなくて埒が明かないって感じかな」
「そうそう。そんな感じだね。でも、そろそろこんな虚しい毎日にも限界が来そうだよ……」
受付嬢は遠い目で煙を吐き出してみせた。いつ冒険者ギルドが解体されてもおかしくない状況ってわけだな。こんなときにギルドマスターは何やってんだか……。
覆水盆に返らずというし、こうなったら受付嬢たちが辞めてしまう前にギルドマスターに決断させないと。冒険者ギルドを復活させるための策を持ち掛ければおそらく大丈夫なはずだ。
「あ、そうそう。そこのあんたに言い忘れてた」
「え?」
受付嬢が我に返った様子で俺に話しかけてきた。なんだ?
「ギルドマスターを探して説得しようなんて思わないことだね」
「え、それはまたどうして?」
「ギルドマスターは強力な攻撃スキルを持ってたんだけどさ、そいつを売り払って、バカ高い鬼性能の隠蔽スキルを購入して雲隠れしてるんだよ。ギルドマスターはそういうやつさ。すっかり臆病者になっちまったんだよ……」
「…………」
鬼性能の隠蔽スキルだって? 試しに『ガイド』で探し出そうとするも、矢印が出てこない。それなら今度はあの魔法の番だ。
(ギルドマスターはどこにいる?)
(…………)
『アンサー』でも場所がわからないのか……。
こうなったら自力で探すしかない。ギルドマスターがそんなに臆病者ならエルの都から出るわけもなく、必ずどこかに潜伏していると思われる。
ただ、この広い都をしらみ潰しに探すのは骨が折れる作業だし、発見する前にギルドが潰れてもおかしくない。
一体どうすれば……って、そうだ、あの手があった……。
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