一五五話
俺たちは、プリンの言う例の訓練場とやらに向かった。といっても、本体の俺は【隠蔽】状態でプリン、ホルン、エスティア、分身の四人を追いかける格好だが。
そこは豪華な宿の地下にあるということで、一階廊下の突き当たりにある長い階段を下りていくと、奥の壁が遥か遠くに見えるほどの大部屋が待ち構えていた。
さすが、王族の秘密の訓練場となると、昼夜問わず気兼ねなく暴れられるような場所が提供されるんだな。
「ここはね、ユート。すっごく広い上に丈夫に出来てるから、多少派手に暴れても問題ないの。だから……プリンのためにも絶対に強さを証明してね? ぷいっ」
「そ、それがしのためにも、どうかよろしくお願いするのであります、ユートどの……」
「ああ、わかった。強さを見せる」
「フッ……」
俺の『アバター』の淡々とした返答に、エスティアが小ばかにしたような笑みを浮かべてみせた。やっぱり俺の分身が低ステータスだと見抜いてるみたいだな。
「では、それがしが開始の合図と勝負の判定をするので、ユートどの、エスティア、それがしとともに中央へ」
ホルン、分身、エスティアの三人が部屋の中心部へ歩いていく。俺もついていくと、そこにはわかりやすく花の紋章が描かれていた。あたかもその場で咲いてるかのようだ。
ん、何を思ったかエスティアが分身のほうに耳打ちしてすぐに離れた。こういうときのために『以心伝心』があるので使ってみると、あの女の小声が脳裏に響いてきた。
『逃げるなら今のうちです。一体どうやってプリンさまとホルンさまに取り入ったのかさっぱりわかりませんが、このままでは確実にボロが出ますよ』
「…………」
なるほど。やはり分身の力が見透かされている。だがここまで自信満々に来られると、こっちとしても鼻を明かしたくなるってもんだ。
それでも、俺自身がいきなり表舞台に立つつもりはない。【伝導師】スキルの新しいテクニックを試したいしな。そういうわけで、早速分身に『厳格教育』を施した。さて、ステータスを確認するとしよう。
__________________________
名前 如月 優斗(アバター)
HP 23100/23100
MP 1100/1100
攻撃力 1100
防御力 1100
命中力 1100
魔法力 1100
__________________________
おお、これは凄い……。超強化する効果なだけあって、《教育者》の称号の効果も上乗せされ、以前の11倍も上がっているのがわかる。一日一回が限度とはいえ、【伝道師】スキルのレベルが上がればもっと強化できるはずだ。
さて、次はエスティアってやつのステータスを覗いてみるか。
__________________________
名前 エスティア
年齢 23
性別 女
HP 2900/2900
MP 1200/1200
攻撃力 620
防御力 410
命中力 734
魔法力 1200
所持スキル
【魔法剣士】レベル26
所持テクニック
『ライトニングバッシュ』『ファイヤーダンス』『ウォーターブレイド』『ロックストライク』『ファントムソード』『マインズアイ』
所持装備
ロングソード
レザーベスト
称号
《密偵》《宿屋さん》《鉄の女》
__________________________
なるほどなるほど。プリンとホルンを混ぜたような感じのステータスだな。
【慧眼】で色々調べたところ、【魔法剣士】の『マインズアイ』というテクニックは、相手のステータスを覗ける効果なんだとか。道理で俺の分身を舐めてかかってくるはずだ。
所持装備はおそらく本番用ではなく、練習用のものだとは思う。実際、たった今分身もエスティアと同じ武具をホルンに手渡されたところだし。
さあ、まずは超強化した『アバター』を彼女と戦わせてお手並み拝見といこうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます