一四七話
「ぬっぐあぁっ! ほげえええぇっ! ぐぎ、ぐぎぎっ……!? ぐぎゃああぁっ! ぬっ……? ぬごおおぉぉぉぉぉっ!」
旧校舎の屋上にて、俺の拷問により反田の痛々しい悲鳴が響き渡るが、助けに来るやつなんているわけもなかった。
なんせ、『インヴィジブルウォール』+『ラージスモール』によって、ここら一帯は完全に封鎖してるからな。ま、それ以前にこいつに人望とかあるはずもないから、見物人がいても見て見ぬ振りをされるだろうが。
ちなみにどんな手段で反田を責めているかというと、俺の『アバター』を幾つも作って『指導』で鍛えたあと、やつをじわじわと痛めつけるように『命令』したのだ。
俺が直接やると、ステータスが高すぎるせいで手加減してもすぐ死にかけちゃうからな。ボールペンとかで刺しまくるのはさすがに飽きたし。
HPが危険水域に達すると汚物をぶちまけて失神することもあり、分身たちにはその時点で攻撃をやめるように、という『命令』もしてあるんだ。
だから俺がやることといえばやつが気絶したのち、『エリクシルヒール』をかけることくらいなので楽だ。あと、正気を失わないように『セージ』もかけてあるのでまさに生き地獄だろう。
しかもこの拷問によって、【伝道師】スキルのレベルが15まで上がったので一石二鳥だった。新しいテクニック『厳格教育』もゲットしたしな。一日一回限定だが、自身よりスキルレベルが低い相手を超強化できるという効果だ。
とはいえ、俺自身飽きてきたことも事実。さあて、そろそろ仕上げに入るか。
「おい反田、最後に何か言いたいことはあるか?」
「……ら、らぐに……」
「ん?」
「……らぎゅ、らぐになりだい……だがら、はやぐ、ころちて、ぐだざいぃ……」
「楽になりたいって、お前なあ……教師の立場でありながら生徒の葬式ごっこを散々愉しんでおいて、それはないだろおっ!?」
「ひっ……」
俺はやつに顔を近付け、絶影剣をペロリと舐めてみせた。ついつい近藤の真似をしてしまう。癖になりそうな上、知能も低下しそうだからあまりやらないほうがよさそうだ。
「残念ながら、簡単に死なせることはできない。ちなみに、浅井以外の不良グループはみんな俺が魔法で惨めな姿に変えてやったよ」
「えっ……」
「永川は椅子、影山は影、虎野は鶏、近藤は昆虫といった具合だ」
「な、なななっ……」
「反田憲明、お前はなんに変えてやろうかなあ?」
「……い、い、嫌だぁぁ……ひっく……。だのむ……だのみまじゅがら、らぐにじなぜでぇ――」
「――ダメだ。お前もこれから人間じゃなくなるんだよ、反田憲明……」
俺はやつの遺影を見せつけつつ、ニヤリと笑ってみせた。
夕陽にまみれた2年1組の教室に俺は帰ってきたわけだが、この上なくざわめいているのは、天の声が届いたばかりだからだ。
『そのお知らせというのは、仮面の英雄さまが、例の教室の荒れ具合をみかねて、ストレス解消の道具をご用意されたということです!』
「――フンガーッ」
やがて、俺のペットのジャイオンがここまで運んできたのは黒い物体だ。
『この道具について、正直なところ私も詳しいことはよく知らないのですが、あの方によるとサンドバッグというものらしいです。かなり丈夫に作ったとのことなので、遠慮なく利用してくださいね。それではっ』
「「「「「ザワッ……」」」」」
黒板前に吊り下げられたサンドバッグに対して、生徒たちの注目が一斉に集まるのがわかる。もちろん、あの中身はあいつなんだけどな。
(……ワ、ワタシハ、イッタイ、ドウナッタノダ? ナニモミエナイ、キコエナイ。ソレトタップリ、イヤナヨカン……)
心の声を聞いてみて俺は感心した。嫌な予感は当たってるぞ、反田憲明。
これから、やつはサンドバッグそのものとして、鶏野とともに生徒たちのストレス解消に大いに活用されることだろう。今まで散々俺をダシにして愉しんできたんだから、それくらいはやってもらわないとな。
さて、次回の標的はもちろんあいつだ。それと、ほかのクラスメイトたちに対してのお仕置きもまだだし、俺の戦いはこれからが本番だといっても過言じゃないくらいだ……。
__________________________________
※あとがき
応援ありがとうございます。これにて第五章が幕を閉じ、第六章の幕開けとなります。引き続きお付き合いしていただけたら幸いです。
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