一二一話
鶏臭い2年1組の教室に入った俺は、自分の席へと向かった。復讐を始める前にまずは天の声に耳を傾けないとな。
以前は同級生たちが小ばかにした視線をこっちに送ることが多かったが、今はまったく眼中にない様子で、不良グループについて嘲笑交じりに話してることが多い。まああれだけ数が減ったわけだから舐められてるんだろう。
『皆さま、おはようございます!』
お、早速いつもの声が教室内に響き渡った。
『本日に関しましては、異変がなかったので私から何も話すことはございません。つまり、良いほうのお知らせでした。それではっ!』
「…………」
なるほど、そういうことか。天の声の人が何も話すことがないってことは、モンスターの襲来もないってことだから安心できるし、確かにグッドニュースってわけだ。
「うっ……?」
また頭上に何か落ちてきたと思ったら、折り紙だった。まさかと思って広げてみると、やはり文字が書かれていた。
何々――今日の夜、大事なお話があります。私たちが初めて出会った場所でお待ちしてます。復讐が終わったらでいいので来てくださいね。ヒナより――だって……。
やっぱり彼女には色々見透かされちゃってるな。それにしても、大事なお話ってなんだろう? 気にはなるが、その前にどうしても復讐を果たしたいってことで、俺は近藤のステータスを確認することに。
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名前 近藤 孝彦
HP 689/689
MP 107/107
攻撃力 143
防御力 161
命中力 281
魔法力 107
所持装備
ブーメランナイフ
レザージャケット
所持スキル
【盗賊】レベル14
所持テクニック
『スティール』『バックステップ』『ピンポイントアタック』
称号
《泥棒》《白目野郎》《短剣舐め郎》《ゴブリン》《汚物》《生男》
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なるほど、ナンバー2なだけあってそこそこレベルを上げていて、テクニックも三つ所持していた。
『ピンポイントアタック』は、的確に相手の弱点を突くことができる効果らしい。従魔のリザードマンはというと、攻撃力が500近くあるだけであとは極平凡なステータスだった。
……こいつの称号についてはあまりにも酷すぎてコメントしようがないな。
ん、何やら浅井と会話中のようなので聞いてみるか。
「なあなあ、六花ぁ、いい加減機嫌直して楽しもうぜ。妊娠しなきゃセーフなんだしよお」
「近藤君、しつこい……。そんなこと言ってまたゴムつけないでやる気でしょ」
「今回はちゃんとつけるから心配すんなってえ。おいらは虎野よりはずうっと長持ちするんだからよおっ」
「はあ、最悪……まあ、つけるならしてやってもいいけど。それと、ここでやるのはやっぱり恥ずかしいからやめてよね……」
「へへっ。楽しみだぜえ」
「コッ……コケエエェッ――!」
「――黙れっ!」
「…………」
近藤と浅井の会話を聞いて、また鶏野と反田が暴れ始めるいつもの流れだ。お、近藤がウキウキした表情で席を立ったかと思うと、まもなく浅井が澄まし顔でそれに続いた。
隠れた状態で尾行してみると、近藤たちは男子トイレのほうに向かっているのがわかったので、俺は『ワープ』で先回りすることに。
よしよし、思った通りやつらがトイレに入ってきた。どうやらリザードマンとヴァンパイアを入り口で見張りに立たせ、個室内でヤるつもりのようだな。近藤が鼻歌交じりに意気揚々と中へ入っていく。
そうはいかないってことで、俺は『オールチェンジ』を使ってとある人物に化けると、個室の隣で待機することに。
「――へへっ……ゴムなんかつける振りすりゃいいんだよお」
「…………」
聞き耳を立ててみたが、また生でやるつもりだったのか。いかにも近藤らしい。
「六花のやつ、おっせえなあ……」
そりゃそうだ。お前を追いかけてきた浅井は『スリープ』で眠らせてやったんだから。その代わりに入るのは、【隠蔽】を解除したばかりの俺だ。まあ姿は別人になってるわけだが。
「遅いだろおお、六花ああぁ――」
「――ふむ。待たせたようだな、近藤」
「……え、え、ええええぇっ……!?」
俺を見上げる近藤の顔が見る見る青白くなっていく。そりゃそうだろう。影山と相打ちして死んだと思っていたボスの虎野が、こういう形で現れたんだからな……。
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