一一九話
「うしゃしゃっ……。それにゃー、もーいっきゃい、しゃいころを振りまひゅよおぉぉっ」
いつも食事を作ってくれるご褒美として、本当は少なめにするつもりだったニンジンを一本分カレーに入れてやったこともあり、すっかり酔っ払ってご機嫌な様子のラビが巨大サイコロを持ち上げた。
実を言うと、彼女がサイコロを振るのは本日2回目で、一回目は既に処刑した永川の5が出たのでやり直しになったんだ。
今まで見てきた数字――虎野の1と影山の4と永川の5――は出してもそこで終わりじゃなくて、近藤の2か浅井の3か反田の6が出るまで何回も振るようにあらかじめ言ってある。
「うー……モコねえ、ラビお姉さまがサイコロを2回も振ってて羨ましいよー……」
「うふふー。モコひゃん、そんにゃにしゃいころ、振りちゃいでしゅかあ? ころころ、ころころっ」
「むー……ぷくーっ」
ラビはいつの間にかビキニアーマーまで装備していてやる気満々だ。ちなみに、涙目で頬を膨らませてるモコも名乗り出たものの、ジャンケンでラビに負けてしまった格好なんだ。
「しょおれええええぇぇっ!」
「「「「「おおぉっ!」」」」」
サイコロが空中で激しく回転し、本当の意味で酔ったファグたちが歓声を上げる。なんでラビがこんなことをしてるのか、彼らにはわけがわからないとは思うが、お祭りみたいな雰囲気なのでなんとなく盛り上がってる感じだ。
まもなくサイコロは落下すると、しばらく狂ったように転げ回ったのち、ようやく止まろうとしていた。さあ、何が出るかな、何が出るかな――?
「――2が出ましたぁー! わあーいっ!」
ラビが飛び跳ねてはしゃいでいる。2が出たってことは、ナンバーツーの近藤か。遂にやつを処刑するわけだ。折角ボスの座まで上り詰めたっていうのに、なんとも短い天下だったな……。
「さすが、ニンジン好きのラビじゃな。ニンジンだけに、2を出しおったわい!」
「「「「「ワハハッ!」」」」」
酔いも手伝ってか、キーンのダジャレで【ダストボックス】内は笑いの坩堝と化した。
「はっ、はううっ?」
それで調子に乗ったのか、鼻の下を伸ばしたキーンがラビの尻を豪快に撫でてしまった。
「うひょひょっ。こりゃ弾力があっていいケツじゃのー。手触りも良いしわしの頭にも負けとらんわいっ」
「お、おいおい、キーン、いくらなんでもそりゃまずいって……」
「そ、そんなことしたらダメだよお……」
「な、何を触ってるかわかってるの……?」
「ん? そんなのわかっとるわい。ただのケツじゃろ。カッカッカ――!」
「――う……うさあああああっ!」
「ぶぎゃっ!?」
キーンがラビに突き飛ばされて、壁にぶつかってしまった。あーあ、キャロット族のラビにお触りなんかするから……って、その衝撃で近くの冷蔵庫が倒れ、入れていた物が冷気とともに飛び出したので、俺は慌てて中に収めた。
「……あ、あ、あれは……悪魔、じゃあぁ……」
「…………」
キーンは顔面蒼白になっててかなりショックを受けてる様子だが、まさか冷蔵庫の中身を見てしまったんだろうか。それとも、《白い悪魔》のラビのことを言ってるんだろうか?
まあいいや、これについてはファグたちには関係のないことだからな。酒をしこたま飲んでることもあって、明日になった頃には忘れてるだろう、多分……。
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