一〇四話
「おっ、やっと来たか……」
俺が屋上の中心付近で待機していたところ、やがて出入り口から不良グループのボス――虎野竜二が、浅井と近藤を引き連れてやってくるのが見えた。
あの二人が俺の作った『アバター』だとも知らずに、ご苦労なこった。
ちなみに、それまで屋上には何人か生徒たちがいてテクニックや魔法を試してる様子だったので、『テラー』+『ラージスモール』で全員避難させた上、入口も『インヴィジブルウォール』によってたった今封鎖したところだ。
向こうには従魔のゴーレムもいるとはいえ、これで事実上、虎野と俺は一対一ってことになる。もちろん、やつは俺が影山だと信じ込んでいるだろうし、その正体が誰なのか知る由もないとは思うが。
「フンッ……」
虎野は俺からある程度の距離を置いて立ち止まったあと、自信に満ちた笑みを浮かべてみせた。
「影山、わざわざ来てやったぞ。しかし、お前みたいな雑魚が俺様に決闘を申し込むなんて夢にも思わなかった。あれか? もしかしてジョークのつもりなのか? だとしても、許すつもりなど毛頭ないのだがな」
こいつ、余裕振りやがって。無駄に貫禄があるところがまた腹立つ。今すぐ処刑してやりたいところだが、ここで一応やつのステータスを覗いてみるか。
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名前 虎野 竜二
HP 1750/1750
MP 143/143
攻撃力 257
防御力 235
命中力 225
魔法力 143
所持装備
ソーンナックル
レザーベスト
所持スキル
【格闘家】レベル19
所持テクニック
『念動拳』『天竜拳』『稲妻疾風脚』
称号
《ボス》《殺人鬼》《早撃ち》《裸の王様》
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おお、そこそこいい感じのステータスになってるんだな。褒めたくはないが、さすが不良グループのボスなだけある。《早撃ち》や《裸の王様》っていう称号は別の意味も含まれてそうだが。
「どうしたのだ、影山。俺様を前にして、怖くて声も出せないのか? ほら、お前たちも何か言ってやれ」
「「……」」
「ん? 近藤? 六花? どうした、さっきから何故黙っている」
おっと、まずい。あの二人はただの『アバター』だから返事するわけがないってことで、俺は至急『コントロール』を使って喋らせることに。
「あ、わりー、ボスウ。ちょっとぼんやりしちゃってよお」
「あたしもー」
「ふむ。まあ余裕すぎて眠くなるのはわからんでもないが、一応決闘なのだから少しは警戒する素振りくらいしてやれ」
「「了解」」
我ながら上手く特徴を捉えて喋らせることができたと思う。まあ嫌というほど見てきた連中だしな。
「というか、影山、お前メディアナはどうしたのだ?」
「ん? あっ……」
そうだった、メドューサの分身を作るのを忘れてた。ったく、面倒臭いやつだな。
「んなの、別の場所に置いてきたんだよ……。なんせこれはタイマンだからな。そっちはゴーレムとか連れてきて、俺のことがそんなに怖いのか……?」
「ふむう。俺様をチキン扱いした挙句、ゴリアスの名前まで忘れるとはな。ここまで侮辱した以上、当然死ぬ覚悟はできているのだろうな?」
「そっちこそ。浅井さんは俺がいただくぜ……」
「フン、ゴミ虫めがっ……! その減らず口、俺様が今すぐ叩けなくしてやるぞおおぉっ!」
虎野の巨体が迫ってくる。さあ、いよいよここからだ……。
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