一〇二話
あれから俺は村の宿で分身と『セイフティバリアー』を作り直すと、すぐに学校へと飛んだ。
「――なっ……!?」
まずは保健室からってことで隠れた状態で直接飛んでみたら、とんでもない光景が広がっていた。
なんと、ホルンとプリンが俺の『アバター』を相手に臨戦態勢だったのだ。
「ユートどのを騙る偽物めっ! 貴様は一体何者なのだっ!?」
「答えてっ。ユートをどこに隠したっていうの……!?」
当たり前だが、消えゆく俺の分身は何も答えない。
もうかなり薄くなってることから、偽物がいつの間にか俺に成りすましていて、本物の俺をどこかに隠したみたいな風に解釈されてるんだと思う。
だが、さすがにそれを肯定すると面倒な展開になりそうだってことで、俺は分身に自身を重ねる形で【隠蔽】を解除してみせた。
「「っ……!?」」
「驚かせて済まなかったな、プリン、ホルン」
「え、で、では、偽物ではなかったのでありますか……?」
「ほ、本物だったっていうの?」
二人ともかなり衝撃を受けたのか放心している様子。それくらい張り詰めていたからだろうか。
「あぁ。俺が眠ってる間、存在感がなくなる効果の隠蔽魔法を無意識のうちに発動させちゃってたみたいでな……」
「「な、なるほど……」」
「ふわあ……そのせいか、寝足りないみたいだから、もうちょっと眠らせてもらうよ」
「「はーい……」」
二人とも俺が本物だと確信したことでようやく安堵したのか、その場にへなへなと座り込んでしまった。
なんだか、彼女たちに途轍もなく申し訳ないことをしてしまった気分だ。
そうだな……次回からは、先にプリンたちの元へ行ったほうがいいかもしれない。ファグたちのところへは後でもいいだろう。
決して彼らを軽視してるとかじゃなくて、宴会したあとで寝起きが悪いことも多いから、分身が薄くなっても気にしない可能性が高いからな。
さて、気分とともに『アバター』を一新して、2年1組の教室へ向かうか。
『ワープ』で移動したのち、彼らの様子を窺ってみる。いたいた。ちょうど天の声がする時間帯だからか、担任の反田を含めてみんな揃っていた。
よーし、ついでに俺も聞いていこうか。それから虎退治をしたって決して遅くはないわけだし。
『――皆さまにお知らせがあります』
俺が席に着いてまもなく天の声が降り注いできた。
『謎のモンスターが一匹、学校へ近付いています』
ん、一匹だって? それまでは数の暴力で来ることが多かったのに、今回はやたらと少ないんだな。ただその分、ヒナでも正体がわからないこともあってランクは相当に高そうだが……。
『あと、こちらへ向かっているのは確実なのですが、動き方が不規則なだけでなく、到着する時期も不明です。なので皆さま、いつ襲われてもいいように充分に注意を払ってくださいね』
「…………」
いつ来るかもわからないのか……。これはやはりかなり厄介な相手みたいだな。こういう大変なときに、救世主の最有力候補として認められてる俺が復讐という私事を優先してもいいんだろうか?
『それではこの辺で――と言いたいところですが、仮面の英雄さま、パトロールは続けてくださいね♪』
「ははっ……」
天の声の人は俺の気持ちがよくわかるみたいだな。お墨付きを頂いたし、遠慮なくやらせてもらうか……っと、最後にやつらの反応を聞いておこう。
「ふむ。今回はたった一匹なのだな。ならば、またいつものように出しゃばり仮面がなんとかするんだろう」
「ボスウ、俺もそう思うぜっ。パシリの仮面野郎がよお、無駄に骨を折ってる間においらたちは宴会としゃれこもうぜえぇっ」
「あ、それいいねー、近藤君っ。お酒とか持ちこんでさ、パーッと騒いじゃいましょっ。あ、人数減ったし、反田君もどう?」
「は、反田君、だと……浅井、お前なあ、私は一応教師だぞ――?」
「――おい、反田。お前、俺様の彼女に向かってその口の利き方はなんだ。殺されたいのか?」
「あ、いえ、虎野さん、失礼いたしましたあっ! もちろん喜んで参加しますっ!」
「「「「「どっ……!」」」」」
「…………」
虎野に睨まれた反田の怯えように笑い声が上がる。こいつらは本当に相変わらずだな。だけど、一層ハートが燃え上がってきた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます