一〇〇話


「わっふう! ご主人さまー、見て見てぇーっ、モコが振ったサイコロが止まったよぉっ!」


「なっ……!?」


 なんと、サイコロの目は真っ赤な1を示していた。つまり、虎野の処刑だ。この結果はあまりにも意外だった。


 不良グループのボスってことで、やつの処刑は最後になるんじゃないかと予想していただけに。やはり、未知級のモコがサイコロを振るとこうなるのか。


 決まったからには早速虎退治――といきたいところだが、もう夜も更けてきた頃なので明日決行することにしよう。


 というわけでさあ寝るかと思ったら、ラビとモコが既にベッドにいて俺にウィンクしてきた。おいおい、ずっと一緒にいるとそういうところまで似てしまうのか。というかラビもさっきまであんだけ落ち込んでたのに立ち直りが早いな……。


「ラビ、モコ、すぐ戻ってくるからちょっと待ってて」


「「はぁーいっ」」


「ごくりっ……」


 甘い声色にたじろぎつつ、俺は『ワープ』で保健室前まで飛んだ。もちろんプリンたちの様子を見るためだ。彼女たちがまた散歩して騒動になってる可能性があるしな。


 ただ、いきなり現れると驚くと思うので、保健室の扉をノックしてから入ることに。トントン、トントン――って、あれ? 全然応答がないし、まさか出かけちゃってるのかと思って入ってみたら、ちゃんと二人とも中にいた。


「も、申し訳ない、ユートどの。プリンさまが、ノックされても絶対に開けないようにと仰ったものですから……」


「ふんだっ。ユートは、プリンたちのことなんてどうでもいいんでしょ。こっちも、ほんの少しは気になるけど、ユートのことなんてどうだっていいもん。ぐすっ……」


「…………」


 なるほど、プリンが涙目になって顔を逸らしてるし、俺に相手にされてないと思っていじけてたってわけか。


「いやいや、どうでもいいなんて思ってたらここには来ないよ」


「プリンさま、それがしもそう思います。ユートどのは多忙ゆえに今までここへ来られなかったのかと……」


「……じゃあ、もう用事は終わったってこと? それなら、一晩ずーっとここにいてよ。プリンのことが嫌いなら別にいなくてもいいけど。ぷいっ……」


「プリンさま……」


「うっ……」


 弱ったな……。ラビのところへはすぐ戻ると言ってあるだけに即答できない。今頃わくわくしながら俺の帰りを待ってるだろうしなあ。毎回『スリープ』+『ドリーム』でごまかすのは限界がある上、当然負い目だってある。


 うーん……そうだな、こっちにも『アバター』を置いていくか。プリンたちには何かあっても大丈夫と思ったが、クーデターが起きたことで精神的にかなりこたえてるっぽい。


「わかった、こっちにも置く……じゃなくて、いるよ」


「「おぉっ……!」」


 プリンとホルンの目が輝くのを見て、ちょっとばかり罪悪感が湧いてきたが仕方ない。


「ふわあ……ただ、眠いから横にならせてもらうよ」


「りょ、了解いたした」


「うんっ」


 そういうわけで、俺は分身を保健室のベッドに置き、【ダストボックス】へ戻った。


「ユートしゃま、おかえりでしゅううっ」


「ご主人さまーっ、おかえりだよぉっ」


「た、ただいま……」


 それから俺は一晩中、目をギラつかせたラビとモコの抱き枕にされるのだった……。

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