九四話
「プリン、ホルン、2年1組の教室にいたのは俺のそっくりさんなんだよ」
「「えぇっ……!?」」
「そういうわけだ。二人の気持ちはありがたいけど、注意したからあいつらもしばらくは大人しくなるはずだし、これからは見かけても放置してくれ」
「そ、そうだったんだ。ユート、ごめんなさいしたくないけど、ごめんなの……ぷいっ……」
「そ、そうでありましたか。ユートどの、それがしが冷静さを欠いてしまい、本当に申し訳ない……」
「わかってくれたならそれでいいんだ。それじゃ、俺は用事があるからこの辺で」
「はいなの」
「了解であります」
俺はプリンたちに念押しすると、『ワープ』を使ってファグたちのところへ飛んだ。なんせ、もうすぐファグとミアの故郷の村へ到着する頃だからな。
「――ねぇユート、あたしの話、ちゃんと聞いてる……?」
「あっ……」
戻るなり、リズが怪訝そうに訊ねてきた。そうだった。急いでたから『アバター』を『コントロール』で眠らせてなかったんだ。
「ど、どうやら、目を開けたまま寝ちゃってたみたいだ……」
「そ、そうなのね。道理で反応がないわけだわ……」
「カッカッカ、ユートは本当に器用じゃのう」
「ははっ……」
なんとかごまかせたみたいでよかったが、ファグとミアは相変わらず無言だった。
彼らにとっての故郷の村がいよいよ近付いてきたっていうのに、一体どうしたっていうんだろう。とてもじゃないが、それを聞けるような空気でもないしなあ。
「――あ、あれ……」
ファグたちが塞ぎ込んでいる理由は、それから少し経って村に到着したことでようやく理解できた。ちゃんと建物は残ってるし、荒らされたような形跡も見られないものの、村人の姿がまったく見えないんだ。
「ち、畜生……廃墟になっちまってるのかよ……」
「う、うん、そうみたい……」
「ざ、残念だったわね……」
「う、うむ。わしの頭のような状態じゃ……」
「「「「「……」」」」」
《太陽の男》キーンでも明るくできないというのか。なんとかしてやりたいところだが、村人たちがいないんじゃどうしようも……って、そうだ。
心の中で何かを質問したとき、それに答えてくれる魔法があると便利じゃないかってことで、俺は【魔法作成】スキルで『アンサー』という魔法を作ると、村人たちが生きているのかどうか訊ねることにした。
この場合『ガイド』でもいいんだが、生きているかどうかの区別はつかないわけだしな。下手したら、死体の山に遭遇してさらにファグたちを落ち込ませることにもなりかねない。
(この村の人たちは生きている?)
(イエス)
「おおっ……」
「「「「ユート?」」」」
「あ、いや、村人たちは生存してるみたいだよ」
「「「「えぇっ!?」」」」
ファグたちは驚いた様子だったが、信憑性があると感じたのか表情が明るくなっていた。それだけ俺の言葉に説得力があるってことなんだろう。
ただ、今生きているからといって、彼らに危険が及んでいないわけではないはず。村からこうしていなくなってる時点で充分に異常事態だからだ。
ということで、俺は早速『ガイド』を使って村人たちがいる方向を示した。
その際、近くにモンスターがいないかどうか一応『サーチ』で索敵してみるが、そういうものはいなかった。神級モンスターとか、あるいは強力な隠蔽スキルを持っているモンスターだったらわからないが。
でも仮にそういう強力なモンスターがいた場合、今頃村人は全員死んでるはずだし大丈夫だろう。
馬車で行けば当然目立つということもあり、俺たちは徒歩で、さらに【隠蔽】を全員に使って慎重に進み始める。
ほどなくして自分らが辿り着いたのは、森の中にある洞窟の前だった。どうやらこの奥に村人たちはいるらしい。
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