七六話
ほどなくしてサイコロが止まり、その目は――4……すなわち、影山聡志の処刑を示していた。
「4が出ましたーっ!」
「もひゃあっ!」
ラビとモコが飛び跳ねてはしゃいでいる。それくらいで喜ぶ姿に微笑ましいと思いつつ、なんのためにサイコロを振ってるのかは口が裂けても言えないなとも思う。
しかし、さすが虎野、浅井、近藤、反田だ。今回も処刑を回避したな。
もちろん俺は影山にも復讐したいと思ってるが、正直言うとこの四人のうちの誰かを始末したかった。昔から憎まれっ子世に憚るなんて言葉があるようにクズは悪運が強くてしぶとく生き残るというが、まさにそれか。
とにかくターゲットは影山に決まったということで、俺はやつをどうやって始末するか考えることに。
そうだな……よし、こうしよう。あいつに相応しい処刑方法はアレしかない。
「ラビ、モコ、ちょっと出かけてくるよ」
「はぁーい。すぐに戻ってきなさいっ」
「もひゃいっ」
「ははあ」
早速俺は【隠蔽】を自身に使い、【ダストボックス】を出て2年1組の教室へと向かった。このなんともいえない高揚感をなるべく長く味わいたいので『ワープ』は使わずに歩いて向かう。
「…………」
教室をチェックすると、不良グループは相変わらずバカ話に夢中の様子。ちょっとだけ聞いてみるか。
「ふむ。あの不快な天の声もなく、今日は至って平和だな」
「まっただぜ、ボスウ。何かあっても、パシリ仮面がなんとかしてくれるしよお」
「キャハハッ! パシリ仮面って、あいつにピッタリね。救世主最有力候補っていうけど、それって要するにただの奴隷でしょ」
「浅井さんの言う通りだよなぁ……。あの腹黒な天の声の言いなりになるなんて馬鹿げてるし、どう考えたってタダ働きのアホだろ……」
「…………」
「「「「ぶへっ……!?」」」」
久々に『ミスチーフ』セットを使ってやる。いい気味だ。
それからやつらがイライラを発散させるかのように無言で煙草を吸ったあと、虎野がおもむろに立ち上がり、浅井がそのあとを追いかけていった。
そうか、二人は恋人同士だし、今から卑猥な行為をやろうってわけか。
お……傍から見てもはっきりと判断できるくらい、影山の顔つきが険しくなっていて相当に苛立ってるのがわかる。
そんな様子とは対照的に、ナンバー2の近藤は煙草をふかしながらニヤニヤしていた。
「影山ー、お前、浅井のこと好きなんだろお?」
「……い、いや、別に……」
「言っても大丈夫だって。バレバレなんだからよお」
「うっ……」
「なあ、影山。お前、ここは異世界だってわかってるよなあ?」
「っ……!?」
「そんな顔するなよ。おもしれーじゃねえか。下剋上っていうのもよお……」
「…………」
影山が神妙な表情になって黙り込む中、近藤が白目を剥いてナイフをペロリと舐めた。やたらとけしかけてるな。どうやら状況が混沌化することを望んでいて、なおかつ漁夫の利を狙ってるってわけか。
まあこいつの場合はバカだし、ただ単純に楽しいからカオスな状況を作りたいってだけだろうけど。
さて、と。こうしちゃいられない。虎野と浅井がいないってことは、作戦を決行するチャンスが生まれたってことだ。
そういうわけで、俺は虎野と浅井のほうを追った。ここであの二人を追うのはちゃんとした理由がある。
首を洗って待ってろよ、影山。お前の命運ももうすぐ尽きる……。
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