七四話
「あっ……」
さあ、久々に【ダストボックス】でラビと一緒に寝ようか、そう思ったときだった。
ファグたちのところにいる『アバター』に何かあったみたいなので、ひとまずそっちへ飛ぶことに。
「「「「ユートッ!」」」」
「う……?」
分身が起こされようとしている中、俺はそこに体を重ねつつ『アバター』を消去し、自然に起きたように見せかけた。
「お、やっと起きたか、ユート、もうすぐ次の村だぜ!」
「ふわあ……そうなのか。到着するのが早いな……」
「もー、ユートはずっと寝てるからそう感じるんだよ。お話とかしたいって思ってるのに、いっつもぐっすりだから退屈でしょうがなかったもん」
「そ、そりゃ悪かった……」
まあ、いつもこっちに本体を置いておくわけにもいかないし仕方ない。
「ミアよ、ユートは力を溜めるためにそれだけ寝とるんじゃよ。それに、暇ならわしがおるじゃろ? ほれ、このツルツル頭を玩具にせんか!」
「えー……それ触るの、もういい加減飽きたよお」
「ホント。こんなの触ってたらこっちまで色んなものが抜けちゃいそうだし……」
「カッカッカッ。わしの仲間が増えるなら大歓迎だわい。抜けろ、もっと抜けろっ!」
「キーン、それ言うのやめてくれよ。俺のオヤジがツルツル頭だったから気にしてんだよ」
「ふむ、それではファグは素質あり、じゃな!」
「いらねーよ、そんな素質!」
「「「「「アハハッ」」」」」
いつものように《太陽の男》キーンを中心として盛り上がる中、馬車は村の入り口に到着したが、何か様子がおかしい。建物群は今にも崩れそうなものばかりだし、夜とはいえ人の気配がまったくないのだ。これは、まさか……。
「ひでえ有様だな。どうやら、この村も滅んじまったみてえだ……」
「またあ?」
「ま、よくあることじゃな」
「そうね。早速テント張りましょ」
「…………」
ファグたちはこの事態に慣れているらしく、みんな淡々とした様子だった。まあ、とんでもないモンスターばかりのこの異世界では本当によくあることなんだろう。
今まで訪れてきた村も、昔からあるようで実際は新しく出来たばかりだったのかもしれない。そういや、村に名前がないのはおかしいと思ってたんだが、そういうことか……。
テントに『セーフティバリアー』を張り、俺たちは床に就いた。
インヴィジブルデビルを討伐したし、明日にも二回目の不良グループ処刑祭りを開催しようと思う。わくわくするなあ――
「――ユート、今夜は逃さないわよ……」
「うっ……?」
またリズの色仕掛けだ。しかも、ミアが止めてくれるかと思いきやぐっすり眠っている。これは困ったことになったな。こういう状況で『スリープ』を使って彼女を無理矢理眠らせた場合、俺が魔法で何かやったみたいで不自然なことになると思うし……。
「怖がらないで。男の子でしょ? すぐ終わるんだし、あたしが立派な大人にしてあげるわ……」
「リ、リズ……」
「ふふっ、観念したみたいねえ……」
リズが覆い被さってくるとともに、ラビの悲しそうな顔が頭に浮かんできたが、仕方ない。ここまできたらもうやるしか……って、そうだ、あの方法があった。
『スリープ』+『ドリーム』だ。これを併用すれば、そういう夢を見ていたってことにしてごまかせるはず。
「……んっ……いいわ……ユート、いい感じよ……」
「ごくりっ……」
リズの寝言を聞くと夢の中を覗き見したくなるが、本末転倒になりそうなのでここはぐっと我慢だ。そうだな、彼女だけ夢を見るというのも不自然なので、俺は全員に『ドリーム』を使うことに。
「……えへへっ……僕ねえ、身長だけじゃなくてえ、こんなところまで大きくなっちゃった……」
「……カカカッ、どうじゃ……こんなにフサフサになったぞいっ……」
「……くくっ。遂に、辿り着いたぜ……あのエルの都によ……」
「…………」
みんな凄く幸せそうだし、俺も自分に使って寝ようかな……。
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