七三話
見えない悪魔を殲滅した俺たちは、休息のために一旦【ダストボックス】へ戻ることに。
「くぅー、くぅー……」
「もふぅ……」
「…………」
『エリクシルヒール』で起こしたばかりだっていうのに、ラビはモコを抱きしめつつベッドでぐっすり眠っていた。
目に見えない疲れが溜まってたんだろうか。これも、『バウンドレーザー』とかいう超威力の所持能力を使った影響っぽいな。実際、あれを使うと元に戻ってしまうみたいだし。
【慧眼】で調べてみると、一日一回しか使えず、覚醒した状態も元に戻るとあった。なるほど。
ちなみに、俺は《デビルスレイヤー》っていう悪魔族に強くなる称号を得た。多分ラビも同じものを獲得したはずだ。
「むにゃ……《白い悪魔》って……なんでしゅかぁ……?」
「……あはは……」
寝言でも言ってるように、どうやら本当にラビは《白い悪魔》っていう称号も取得したらしい。どんな効果なのか確認してみると、悪魔族に対する耐性が格段に上がるんだそうだ。
それにしても、ニンジン二本で大災害級なら、三本食べさせたらどうなるんだろうな。所持能力も遥かにパワーアップしてそうだし、想像するだけで背筋が寒くなってくる。
そろそろ俺も寝ようかと思ったが、まだ夜の7時前なので教室の様子を見に行くことにした。ちょうど『アバター』も消えた頃だろうし、もしかしたら今回のモンスター討伐の件で天の声が聞こえてくるかもしれないしな。
――お、いるいる……。2年1組の教室はいつも通り賑やかで、モンスターを倒した直後とは思えないほどだった。
みんな揃ってるな、よしよし。こいつらを仕留めるのは俺なんだから死なれたら困る。もちろん不良グループも普通にいて、教室の後方でふんぞり返っていた。
連中の様子を窺ってみると、虎野が煙草を吸いつつ『今回の敵は雑魚すぎて、俺様が出る幕もなかった』とか抜かしていた挙句、それに対して近藤たちが当然のように同調していた。こいつら、今まで下の階層で隠れてたくせに、偉そうに――
『――み、皆さまにお知らせがあります……』
お、やっぱり来たな……って、なんだかいつもより元気がない感じだが、どうしちゃったんだろう? 体調が悪いのか、あるいは眠いのか……。
『仮面の英雄さま、それにペットさま……あ……ありがとうございますっ! ぐすっ……あなたは救世主の最有力候補です! 今回の敵は見えない上にとっても強くてどうなるかことかと思いましたけど、本当に感動しました……』
なるほど、感極まってたわけか。それにしても、救世主の最有力候補なんて、照れるなあ。不良グループにちらっと視線を移すと、一様に不快そうな表情を浮かべていた。ざまあないな。
『あの、その、仮面の英雄さま、余計なお世話かもですし、モテモテなのはわかりますけど……お嫁さんとかは、慎重にお選びになったほうがいいかもしれませんよ? あなたのすぐ近くで応援している人がいるので……あ、えっと、決して深い意味はないんですけどね! そ、それでは、失礼いたしましたっ!』
「…………」
俺のすぐ近くで応援している人? ラビのことかな? でも、天の声の人は彼女をペット扱いしちゃってるんだよな。
じゃあ一体誰のことだ……? まあいいや。すぐ近くで応援してくれてるならいずれはわかることだろうから。
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