七二話


「こいつを食らえっ!」


「「「「「ッ……!?」」」」」


 降下してくる透明なモンスター群に対し、俺は『カラーボール』という魔法を作り、それ+『ラージスモール』で幅広くぶつけて色をつけてやる。これによって相手が見えるようになるってわけだ。


 よーし、満遍なく色がついてるし、折角の『透明化』能力も台無しだな。


「おー、やるじゃねーか、ユート! いけっ、ぶっ殺せ、皆殺しにしちまえ!」


「もきゃーっ!」


「…………」


 物騒な声援に背中を押される格好で、俺は殺気を込めつつ絶影剣を振り回し、幾重もの剣風を生み出してやった。


「「「「「ムギャアアアァァッ!」」」」」


 悲鳴と鮮血がこれでもかと降り注ぐ中、さすがにHPが高いだけあって耐えられていたが、これだけ削れば充分ってことで、既に詠唱が完了した『ヘルファイヤ』『ディバインサンダー』『アースデーモン』『エターナルスノーデス』の四色魔法の餌食となり、跡形もなく散っていく。


『復活』した悪魔どもが屋上付近まで迫るものの、HPが低い状態ってことで『ニューエクスプロージョン』によって環境に気を使いつつ殺してやった。


「――くっ……」


 どんどん降下してくる悪魔相手に剣風と魔法を駆使するも、処理が全然追いつかない。なんせタフな上にオークデビル並みに数が多いからな。


 それにしても、これだけ災害級のモンスターがうようよいて、よくこの世界は未だに滅んでないもんだ。


 もしかして、学校が召喚されるのはこれが初めてじゃなくて、救世主を探すのが目的とかいって、実際は凶悪なモンスターどもの避雷針にされてるんじゃないだろうな。いわゆる生贄的な。まさかな……。


 天の声の人がそこまで腹黒いとは思えないし、さすがに生贄説はないと思いたい……って、そんなことを考えつつ処理していたせいか、一部が学校内に侵入してしまった。こうなると、校舎に被害が及ぶので魔法の使用はさらに限定的になる。


 だが、それも最初から想定内だった。


 廊下にも『カラーボール』を使って色をつけていたし、『レイン』『タライ』『バナナ』『ダスト』の効果を持つ『ミスチーフ』で大いに滑らせればやつらは間抜けな姿をさらすことになる。


「オラアアアアアアアアッ!」


「お、おぉおっ……」


 こっちは大分片付いてきて、あとは学校へ侵入したやつらだけになったわけだが、ラビがボーンスピアーで悪魔どもを串刺しにしながら走っていた。あれはもう、ただの兎の亜人じゃない。《白い悪魔》だ。


「くたばりやがれええええっ、雑魚どもおおおおおぉっ!」


 しかも、その勢いで壁を破壊したかと思うと、串刺しにした悪魔団子に蹴りを入れて谷底へ突き落としていた。さすが、大災害級……って、言ったそばから『復活』しちゃってるし、『ワープ』で教室まで飛んでしまった。


 まずいな。もうこれは今から追いかけても大量殺戮は免れないか。


「雑魚どもめが……しゃらくせえええええぇぇぇっ!」


「「「「「グガアアアァァッ!」」」」」


「っ!?」


 俺は廊下まで『ワープ』したとき、とんでもないものを目撃してしまった。


 ラビの両目が赤く光ったかと思うと、そこから二つのレーザーが発射され、色付きの悪魔たちを次から次へと駆逐していったのだ。


 これが所持能力の『バウンドレーザー』なのか……。


 それも、障害物に当たると跳ね返るレーザーで、複雑な軌道を作りながらモンスターだけを確実に仕留めるという、なんとも効率のいい悪魔的な攻撃だった。いや、ほんとどっちが悪魔なんだよって。


「……う……うさあぁぁ……」


 あれ、全部仕留めたと思ったらラビが倒れてしまった。


『エリクシルヒール』で起こしてやると、兎耳は垂れ下がり、いつものラビの表情に戻っていた。


「ふわぁ……ユートしゃまぁ? わたひ、お散歩中に寝ちゃったみたいでしゅ……」


「…………」


 インヴィジブルデビルよ、格の違いというものを思い知ったか。これが大災害級というやつだ……ってもういないか。

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